第一章 〜わたしの王子様〜
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食堂では王であるジャッジを中心に
長男のイチジ、長女のレイジュ
そしてニジとヨンジの5人が
大きな丸テーブルを囲って食事を始めた。
王子たちの食事中、ミドリたち侍女は
食堂の隅で控えている。
「ゆで卵か。私は生卵の方が好きなんだ。持ってこい。」
「かしこまりました。すぐに。」
朝食に用意されていたゆで卵を見て
ヨンジがそう言うと
給仕の者がすぐに生卵をいくつか用意した。
「おい。」
「は、はい。」
ふいに呼ばれたミドリが
ヨンジの元へ行くと、卵をひとつ渡される。
「割れ。私は手が汚れるからやりたくない。」
「……かしこまりました。」
そのくらい自分でやればいいのに。
そう思ったが、この程度のわがままは
これまでも日常茶飯事だったので
ミドリは言われた通りに
渡された卵をテーブルの角でコンコンと割る。
「そうじゃないだろ。卵の割り方も知らないのか。」
「え…」
——パシャッ
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
額に痛みを感じて、ドロリと冷たいものが
前髪から頬へ伝って初めて
何をされたのかがわかった。
ヨンジが卵をミドリの頭で割ったのだ。
「なかなか割りやすい。」
「はっはっはっ!きったねェなァ!!」
「おい、うるせェ。静かに食事しろ。」
「………」
それを見て嬉しそうに笑うニジ。
その横で、イチジは騒ぐニジとヨンジに対して
軽く注意をしただけですぐに食事を続ける。
ジャッジ、レイジュに関しては
ミドリの方を見もしない。
「ひとつじゃ足りないな。」
——パシャ、パシャ……
ひとつ、またひとつと頭で卵が割られるのを
じっと堪えながら立っているだけで必死だった。
そうすることしかできない。
周りにいる使用人たちも
ただ見ていることしかできなかった。
「クソ…手が汚れてしまった。」
結局用意された全ての卵を割り終えたヨンジは
怪訝な顔をしながらナプキンで手を拭く。
「何ボーッと突っ立ってやがる。床が汚れた。さっさと掃除しろ。」
「は、はい!申し訳ありません!」
掃除用具を取りに行こうとすると
マリナが寄ってきて静かに耳打ちをする。
「床は私がやっておくから、着替えておいで。」
「……ごめん、ありがとう。」
親友の優しさに涙が出そうだった。
が、泣いている場合ではない。
ミドリは汚れた顔や服を何とかするため
食堂を出た。
このくらいの嫌がらせ、想定の範囲内だったし
きっとまだまだ序の口だ。
どんなに辛くても耐えていくしかない。