第六章 〜あのとき〜
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第六章 〜あのとき〜
いつも命令口調だったヨンジ様が
「……少しでいい。まだここにいてくれ。」
私にお願いをするような
そんな言い方をしてくるから胸が高鳴った。
お風呂上がりでしっとりと濡れた髪に
上半身を露わにしたその姿だけで
私はずっと意識してしまっている。
なるべく直視しないようにして
早めに部屋を出ようと思っていたのに。
熱く、大きな手に手首を掴まれて
そんな目で見つめられてしまったら
出ていくことなんてできない。
「どうしました?具合が悪いんですか?」
「違う。」
見上げれば、熱を持った視線と目が合う。
お風呂のせいで熱くなった顔がなんだか色っぽく
さらに、こうして見ると
やっぱり整った顔立ちで格好良い。
「………」
「………」
何も言わないヨンジに、ミドリも黙り込んだ。
お互いに意識して止まらないこの空気が
恥ずかしくなってくる。
でも離れられない。
見つめ合ったまま、掴まれた腕を引かれて
一歩、二歩とそばへ
肩が振れるほどまで近づいた。
背の高いヨンジを見上げるミドリに
吸い寄せられるように、ヨンジが顔を近づける。
それは一瞬の出来事。
唇と唇が重なった。
「…なっ……」
離れると、真っ赤になった顔のミドリを前に
気を良くしたヨンジは頬に手を添える。
「アホヅラだな。目を閉じろ。」
「ヨンジ様、いけませんっ」
「いいから。」
「ヨ…んっ——」
目は開けたままなのに、またも唇を塞がれる。
でも、以前に無理やりされたときのそれとは違う。
お互いの柔らかい感触を確かめるような
とてもとても優しいキスに
つい、瞼を閉じてしまった。