第五章 〜芽生えた感情〜
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「……なんか、悪かったな。」
「!!!」
突然のヨンジの言葉に
ミドリはまた驚いて立ち止まった。
「本当に今日はどうされたんですか!?」
「あ?」
ヨンジも立ち止まってミドリへ振り返る。
「ヨンジ様が私に謝るなんて……」
「……確かに、誰かに謝ったのなんて初めてのことだな。」
「……私も、大嫌いなんて言ってごめんなさい。」
「あァそうだ。このおれに暴言吐きやがって。」
「これで仲直りですね。」
ミドリがふふっと笑ってみせると
ヨンジもつられたように硬かった表情を緩めた。
意地悪な笑みとも、人を嘲笑う時とも違う
ミドリを見る目は優しく、ふわりと微笑んだ。
ミドリの心はまた動揺し始める。
「……そんなふうに笑った顔、初めて見ました。」
その優しい笑顔は
まるであの時のサンジ様に似ていて
でもサンジ様とは違う。
胸がギュッと締め付けられる、このドキドキは
相手がヨンジ様だからだ。
ミドリが無意識にじっと見つめてしまうと
バツが悪くなったヨンジは口をつぐんでしまった。
かと思えば、突然ミドリの頬へ手を伸ばす。
「なっ、何ですか?」
ミドリが驚きから体をビクッとさせても
構うことなく、その頬に触れた。
「最近のおれはおかしい。」
「え?」
「なぜお前に触れると動悸がするんだ。」
「動悸…?」
その指先は
頬から耳を通り、ゆっくりと首筋を撫でる。
ミドリは恥ずかしさとくすぐったさで
身を縮こませた。
背筋がゾクゾクする。
触れられている箇所が、熱を帯びる。
「体に異常はないと言われた。お前、おれに何をした?」
「何をって……」
誰かに見られてはいないか、と
周りに目を配った。
こんなところ、誰かに見られでもしたら厄介だ。
ヨンジは周りなど気にもしない様子で
空いた手をミドリの肩に置いた。
「動悸もするし、体も熱くなる。」
ヨンジさま、それって……
ヨンジの行動とセリフ、
そしてあと少しでも距離を縮めたら
正面から抱き締められてしまいそうな体制に
ミドリの顔はみるみる赤くなる。
「何を赤くなってる。」
「……ヨンジ様だって、赤いです。」
「っ……」
顔を上げて見つめると、ヨンジは目を逸らす。
「その顔で、そんな目で見るな。」
「ごめんなさい…」
恥ずかしくなって下を向くと
ヨンジもスッとミドリから手を離した。
再び廊下を歩き始めるヨンジの後ろをついていく。
「ヨンジ様、えっと……ヨンジ様の動悸の理由はその…私にもよくわかりませんけど……私もヨンジ様と同じです。」
「同じ?」
「触れられると……動悸がしてきます。」
「お前もどこかおかしいんじゃないか。医者に診てもらえ。」
眉間に皺を寄せ、真面目に返すヨンジがおかしくて
ミドリは声を出して笑った。
「いえ、私は大丈夫。正常です。」
「なんだ。何を笑ってる。」
「すみません、何でもありません。」
「あ、ヨンジ!ここにいたのね!」
前方から声がし
2人の元へレイジュがやってきた。
「お父様が呼んでるわ。」
「あ?なんだよ。甘いモンでも食おうと思ってたのによ。」
「では、お部屋にお茶の用意をしておきますね。」
「あァ。行ってくる。」
ジャッジの元へ向かう2人の背中に向かって
残されたミドリは頭を下げた。
胸はまだ、ドキドキとうるさい。
ヨンジ様のあんな態度が続いたら
私はきっと勘違いしてしまう。