第五章 〜芽生えた感情〜
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不機嫌顔で廊下へ出たヨンジは、歩みを止めた。
目の前にミドリが立っていたから。
結局、ヨンジのことが心配で来てしまったのだ。
「ここで何してる。」
「ヨンジ様が具合が良くないと聞いて、何かあったのかと…」
「いや、問題なかった。」
「そうですか。よかった。」
ミドリは安心したようにフッと表情を和らげる。
その様子を見て、ヨンジの方は調子が狂った。
てっきり自分に対して怒っていると思っていたから。
「……意味がわからないな。」
「え?」
「私のことが嫌いなら放っておけばいいだろ。」
「あ……ごめんなさい。昨日は気が動転していて……」
「……おれがいけないんだろ?」
深く頭を下げるミドリを見下ろしてそう言うと
ミドリは驚いて顔を上げた。
「わかってる。お前が嫌がることはもうしないと言ったのに、怒りから我を忘れた。」
「………」
「してはいけないことをしちまったと思ってる。」
「どうなさったんですか!?」
「あ?」
「ヨンジ様が反省するなんて……あ」
つい滑らせてしまった口を、慌てて手で塞いだ。
「し、失礼しました。」
「全くだ。この野郎。」
廊下を歩き出したヨンジの後を追った。
朝のように″来るな″とは言われなかったので
ミドリはそのまま少し後ろをついて歩いた。
「……ずっとわからないんです。ヨンジ様、昨日はどうしてあんなに怒っていたのです?」
聞いてもいいものかと悩んだが、思い切ってみると
ヨンジの方はあっさりと答えた。
「お前がニジの部屋から出てきたからだ。」
「え?」
「なぜかそれに腹が立った。ニジとは、そういう関係なのか?」
「そういう関係……?」
——この淫乱女
「ち、違います!ヨンジ様、ひどく勘違いされています!」
「勘違い?」
「ニジ様の部屋へ行ったのはケーキを届けるためです。あの時は人手が足りなくて……ヨンジ様が浴室から上がられる前には戻るつもりだったんですが。」
「ケーキ……」
——すげェ柔らかかったぜ
——弾力もあってふわふわでよ
「なんだ、そういうことかよ。ニジの野郎わざと……」
悔しそうに顔を歪めるヨンジをよそに
ミドリは胸がドキドキとうるさくなった。
ヨンジ様が怒った理由は
私がニジ様の部屋へ行ったことが原因だった。
それだけで、壁を壊すほどに怒って
私とニジ様の仲を勘違いして、あんな乱暴を……
それって……
妄想を膨らませ、顔が熱くなる。
いやいや…そんなわけないでしょう、と
一旦冷静になった。
ヨンジ様は気まぐれなときがあるから
自分の召使いを一瞬でも取られたのが
気に入らなかっただけだ。
おもちゃを取られた子どものような
そんな気持ちになっただけ。
思い上がってはいけない。
そう、自分を落ち着かせた。