第五章 〜芽生えた感情〜
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第五章 〜芽生えた感情〜
——あの後
泣き顔を誰にも見られないよう自室へ急いだ。
幸い夕食前の時間帯。
使用人たちはほとんど食堂にいたので
誰かとすれ違うことはなかった。
部屋に戻ると何度も何度も顔を洗った。
鏡に映る泣き顔の自分を見て
さらに涙が溢れてきて、キリがなかった。
怖かった。
あの丘の上で優しく抱き締めてくれたヨンジ様と
私のことを”そういう目”で見ながら
息を荒げるあの人は
まるで別人だった。
どうして、あんなことを…
手の甲で唇を抑える。
初めてのキスだったのに。
ーーーーーーーーーー
次の日——
「ヨンジ様、おはようございます。朝食のご用意ができています。」
「あァ。」
俯いているミドリの表情は
ヨンジからは読み取れなかった。
機嫌良く笑っているようには見えないし
いつも以上に距離を取っている…気もする。
部屋を出ればいつものように
一歩後ろをただついてくるだけ。
怒って…いるんだろうな……
ヨンジの中で昨日のことが鮮明によみがえる。
組み敷いたときの、驚くほどの力の弱さ。
おれの荒っぽい手先では傷付けそうなほど
なめらかな肌。
細っこいくせに全てが柔らかくて
吸い寄せられるように膨らみに手を這わせた。
全ての感触が、まだこの手に残ってる。
そして、無理やり押し付けた唇。
思い出せば、再び体が熱くなってくる。
「……クッソ…!」
むしゃくしゃして髪をぐしゃぐしゃと掻く。
何事か、と驚いて
ヨンジを見上げるミドリへ振り返った。
「お前、今日はもうついてくるな。」
突然のヨンジの言葉にミドリは戸惑った。
「え……?」
「今日はもう、私の周りをウロつくな。わかったな。」
「でも……」
「お前だって、大嫌いな私の顔なんか見たくないんだろ。」
ヨンジはくるりと向きを変えて
ミドリを残し、ひとり食堂へと急いだ。
「……そりゃ、見たくないけど…」
ヨンジの背中を見送りながら
ミドリは小さくため息を吐いた。
どう接したらいいのかわからない。
昨日は酷いことをされたし、本当に怖かった。
でも、あんなに怒っていたのに
途中でやめてくれたのも事実。
ヨンジ様がわからない…