第一章 〜わたしの王子様〜
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「全て私の失言です。処罰はどうか、私だけに。」
マリナまで巻き込むわけにはいかない。
そう思ったミドリは
マリナの肩に手を置いて目配せをする。
「マリナ、行って。」
「でも……」
「威勢がいいな。顔を上げろ。」
言われたとおり、おずおずと顔を上げる。
2人を見下すように睨みつけるヨンジと
しっかりと目が合った。
「随分とサンジを気に入ってるようだな。」
「いえ……」
「一族の恥だ。あいつのことは忘れろ。二度と名前を出すな。」
「はい。申し訳ありませんでした。」
もう一度頭を下げると
ヨンジは2人の横を通り過ぎながら
最後にミドリに耳打ちをした。
「……お前、明日から覚悟しておけ。」
「……え…」
確実にヨンジの姿が見えなくなると
力が抜けて、ミドリはその場に座り込む。
数分前の自分の発言を全て後悔するように
両手で頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。
「…やっちゃった……」
「大丈夫?ミドリ。」
「明日から何されるんだろう?なんなら今ボコボコにされた方がマシだったよ…」
「そんな……でもヨンジ様はニジ様ほど乱暴じゃないし、きっと大丈夫だよ。」
「うーん、だといいけど……」
使用人の部屋へ帰ってくると、ミドリは
自分のベッドへ突っ伏すように飛び込んだ。
できることなら、時間を戻したい。
そんなことを本気で願ったのは初めてだ。
体は疲れ切っているはずなのに少しも眠れない。
目が覚めたときには
ヨンジ様からの嫌がらせが始まるだろう。
もしかしたらイチジ様、ニジ様にも伝わっていて
全員からの攻撃対象になっているかもしれない。
怖い、怖い、怖い……
逃げ出したくてたまらない。
でもここを出たら他に行き場はないし
第一、中にいるときはとても信じられないけど
ここは国といっても常に移動している船の上。
逃げ出せるはずもない。
目が覚めたら、今日のことは夢でありますように。
ミドリのそんな願いは叶うはずもなく
ほとんど眠れないまま、夜が更けていった。