第三章 〜そのぬくもり〜
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専属に戻った日の朝、ミドリが挨拶へ行くと
ヨンジは目も合わせずに「あァ」と
一言だけ答えた。
自分から、無理やり呼び戻しておいて
挨拶のひとつもないのか…と
期待こそしていなかったが、あまりの態度に
嫌気がさす。
四六時中ヨンジのそばを離れられない生活が
また始まった。
「急だが明日の朝、イチジとニジと船を出す。任務だ。」
急なジャッジからの呼び出しから戻ったヨンジは
コーヒーを用意して部屋に入ってきたミドリに
そう告げた。
「任務って、戦争ですか?」
「他に何がある。」
「そうですよね。失礼しました。」
一瞬、ミドリの顔が曇った。
それに気付きながらも特に気にもとめず
ヨンジは思い立ったように続けた。
「お前、明日ついて来い。」
「えっ……」
思いがけないヨンジからの言葉に
ミドリはバランスを崩しそうになりながらも
コーヒーの入ったカップをテーブルに置いた。
「連れていってやる。」
「でも、いつも任務に出られる時は私たちは城に残ってお待ちしています。」
「あ?わざわざ連れていってやるって言ってんだ。何をためらってる。」
「私なんかがご一緒しても、お邪魔になるだけでは……」
「何日かかるかわからない。準備してから来い。明日の朝だ。わかったな。」
強引にそう決められてしまい
「今日はもういい」と部屋を出されてしまった。
廊下を歩くミドリの脳裏に
戦争の記憶が蘇ってきた。
それはまさに地獄絵図で
二度と思い出したくもない光景だ。
戦場。
いくら大金をもらえる仕事だと言っても
あんな場所に何日もいて
正気でいられるなんてどうかしてる…
彼らが強いというのは知っているけど
やっぱりあんな場所へ行くのはやめてほしい。
まぁ、それをしないと
この国は終わってしまうんだろうけど…
「はぁ…行きたくない……」
襲ってくる頭痛に頭を抱えながら
部屋へ戻って仕方なく荷造りをした。
ーーーーーーーーーー
「女なんか連れてきてどうするんだ、ヨンジ。」
ジェルマを出航した船の甲板で
ニジは笑いながらヨンジの肩に手をかけた。
「別にどうもしない。あの女におれ様の凄さを間近で見せつけてやろうと思っただけだ。」
「向こうは迷惑そうだぜ。」
ヨンジの元を離れ甲板の隅の方で海を眺めながら
ひとり佇むミドリに目をやる。
「相当嫌われてるな。」
嬉しそうに笑うニジを「うるせェ」と追い払い
ミドリの方へ足を運んだ。