第二章 〜遠ざかる背中〜
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幸い風が少し止んできたおかげで
レイドスーツに身を包んだヨンジが空から探すと
真っ白な雪の中、ミドリの姿は
すぐに見つかった。
ジェルマの城門から数百メートルほどの
木のそばで、小さくうずくまって倒れており
身体の4分の1ほどが雪に埋もれている。
「おい。」
ヨンジはそばに立ち、見下ろしながら声をかけた。
「………」
「私を無視するとはいい度胸だ。」
反応がないミドリに
仕方なく横にかがみ、頬を叩く。
「おい、おい。死んでいるのか。」
パシ、パシ、と何度か頬を叩くと
薄らとミドリの瞼が開いた。
「なんだ、生きてるじゃないか。」
「………」
「わざわざこの私が来てやったんだ。さっさと立ちやがれ。」
「………」
「おい、女。」
「………ヨンジ…さま…?」
力なく向けられた顔と消え入りそうな声。
ヨンジの姿を確認すると、震える手が伸ばされ
レイドスーツのマントの端を弱々しく掴んだ。
「よかった……」
一瞬笑顔を見せると
そのまますぐに目を閉じてしまった。
「……あ?なんだよ、やっぱり死ぬのか?おい。」
ヨンジは少し動揺していた。
なぜ笑ったのか。
なぜマントを掴んだのか。
なにが”よかった”なのか。
「おい、おい。」
再び頬を叩くも、今度は何も反応がない。
「………」
——お前がいないと言ったら慌ててな
——よかった……
「……お前、本気で私が散歩に出たとでも思っていたのか。おめでたい頭の中だな。」
「………」
「……クソッ。」
相変わらず反応のないミドリの身体に
仕方なく腕を伸ばす。
腹部に片腕を通して抱き上げ
足の後ろをおさえるように肩に乗せると
そのまま飛び上がり城を目指した。
「こんな雪にも耐えられない弱い女が、私をコケにしやがって。」
「………」
「お前ムカつくんだ。サンジが素敵?笑わせるな。あいつは失敗作だ。」
「………」
「聞いちゃいないか。死に損ないが。」
ーーーーーーーーーー
「おい!誰かいないか!」
お城の玄関ホールの床に
ドサッとミドリを乱暴に降ろしながら
ヨンジは大声で侍女を呼んだ。
「はい!ヨンジ様……えっ…ミドリ!!」
集まってきた侍女たち数人が
慌てふためいてミドリに駆け寄る。
「ミドリ!!ミドリ!!」
「冷たいわ!すぐに医務室へ!!早く!!」
「意識がない!どうしてこんなことに!」
「散歩に出たら外で寝ていた。バカな女だ。」
運ばれていくミドリを鼻で笑いながら
そう言うヨンジに、マリナが訝しげな顔をした。
「この雪の中を散歩へ?」
「あ?なんだ、悪いのか。」
「あ、いえ…失礼いたしました。ミドリを助けていただき、ありがとうございます。ヨンジ様。」
「フン。」
深く頭を下げるマリナに背を向け
ヨンジはその場を後にした。