愛に生きて 後編/カタクリ
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子どもの頃から何度も抱き着いてきた
大好きなこの腕の中で、ずっと涙が止まらない。
気持ちに決着をつけたつもりでいたけど
それはただ
思い出さないようにしていただけだった。
この温もりを
本当はずっとずっと、もう一度欲しかった。
私たちは、本当の兄妹じゃなかった。
真実を知ったとき、色々な感情に押しつぶされた。
あの恋心は
許されないものじゃなかった。
お兄ちゃんと私は過ちなんか犯していなかった。
気持ち悪いことでも
恥ずかしいことでもなかった。
そう、少し安心した気持ちと
海軍と海賊という敵対する立場になり
二度と愛し合うことは許されなくなった現実と。
全てを受け入れられなかった私は
お兄ちゃんを敵として恨み続けることで
なんとか軍人としての自分を確立してきた。
今、この腕の中で素直な気持ちになって初めて
幸せがどこにあるのかに気がついた。
惹かれるままに、愛し合ってよかったのに
運命のイタズラなのか
ひどく遠回りをしてしまった。
どちらからともなく、キスをした。
膝の上に乗って
お兄ちゃんの首に手を回して
流れる涙はそのままに何度も何度もキスをした。
時々牙があたっても、それすらも愛おしくて
何度も、何度も夢中になった。
「結婚する。」
唇が離れて、もう一度ギュッと抱き締め合うと
お兄ちゃんが呟くようにそう言った。
「……え…」
「どうせバレているなら、その方がそばにいやすい。」
私の顔を覗き込むように視線を合わせ
額と額をコツンと合わせる。
「ずっとそばにいるんだ。」
少し落ち着いたはずの涙が、また頬を伝う。
「でも…ママが良いって言ってくれるわけ……」
「反対されたらおれはママの元を離れる。大丈夫だ。ママはおれを手放さない。」
ママに対して常に忠実で
いつも彼女のために動いているお兄ちゃんが
私のために家族を捨ててもいいと言ってくれた。
「……どうして、そこまで…」
「お前が何よりも大事だからだ。もう離れる気はない。二度と。」
大きな指先で優しく頬の涙を拭われる。
それでも止まることのない私の涙に
そっと口づけをくれた。
「結婚するんだ。ミドリ。おれと。」
結婚……
10年前の私たちには
決して望んではいけないことだった。
「お前はこう言う……”うん、わかった”」
2人、笑顔を向け合って
「……うん、わかった。」
もう一度、強く強く抱き締め合った。
もう、何もいらない。
その愛があればいい。
心の底から、そう思った。
家族を捨てても
肩書きを捨てても
離れていた時間を取り戻すように
これからの私たちは、愛に生きていく。
…fin