愛に生きて 後編/カタクリ
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——トットランド・コムギ島のハクリキタウン。
「……ん………」
ズキン、とした頭の痛みに目が覚める。
重い瞼を無理やり開くと
そこは知らない部屋のベッドの上だった。
痛みのする後頭部に手をやり
頭に包帯が巻かれていることに気付く。
「……えっと……」
回らない頭で記憶を辿る。
そうだ。
ビッグ・マム海賊団と戦闘中に倒れて
カタクリお兄ちゃんに、船内に連れて行かれて……
でもここは床の揺れがないし
この広さの部屋は、きっと船の中ではない。
ということはここは……
「……ホールケーキアイランド…?」
まさか…
こんなところまで私を連れ帰って
どうするつもりなのか……
思わず起き上がると
再び頭にズキンと痛みが走る。
「痛っ……」
——ガチャ
と、扉が開いたので身構える。
「気がついたか。」
……カタクリお兄ちゃんだった。
「10年ぶりだな。」
ベッドの横の椅子に腰掛け、長い足を組む。
「元気だったか。」
ドクドクドク、と心臓がうるさい。
目の前にいるのは確かに本人で
体はさらに大きくなって大人びた雰囲気。
でも仕草も、話し方も、声も、鋭い視線も
変わらずあの頃のままだった。
「ミドリ。」
「やめて!あなたと馴れ合う気はない!」
私は抵抗するように布団に顔を埋めた。
「どういうつもり?ここはどこなの?」
「コムギ島だ。今はおれが治めている。」
コムギ島。ママの縄張りだ。
「なぜ私をここへ……」
「……わからない…気付いたら連れてきていた。」
「……意味わかんない……」
「……海軍へ戻りたいのか?」
「戻りたい、と言ったら帰してくれるの?」
布団から顔を上げると
カタクリお兄ちゃんは顔を逸らして立ち上がった。
「断る。とりあえず今は体を休めろ。」
「何それ……」
「何かあれば屋敷の者に言え。ここの者たちにはお前が海軍であることは言っていない。ママもこのことは知らない。安心していい。」
そう言ってカタクリお兄ちゃんは部屋を出た。
私は横になって布団の中に潜り込み
唇を噛み締める。
鼻の奥がツンとなって今にも涙が出そうだった。
——ミドリ。
あの頃のように、あの頃と同じ声で
私の名前を口にした。
それだけで胸が張り裂けそうだ。