愛に生きて 後編/カタクリ
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「——12時の方向!!標的と思われる船を発見!!」
目的の島に着く前に
見張り台にいた兵士が叫んだ。
瞬間、全員が持ち場について、船内に緊張が走る。
その方向を見ると
間違いなく、ビッグ・マム海賊団の船。
本船ではなく、タルト船だ。
取引を終えてナワバリへ帰るのだろうか。
こんな私でも、一端の兵士。
これまでに数々の死線を乗り越え
それなりの経験も積んできた。
それでも、いざこの時を迎えると
心臓はドキドキとうるさいほどに動悸がして
足も震えた。
10年の時が経っている。
彼らは……カタクリお兄ちゃんは
私に気付くだろうか。
もう一度会ってしまったら私は
ちゃんと自分の任務をこなせるだろうか。
タルト船を射程距離に捉え、大砲を撃ち始める。
不安になってる場合じゃない。
私は剣を手に取った。
船と船が近くなると
乗っている人物像が明らかになってくる。
「……!!」
恐る恐る確認して息が止まった。
甲板に、カタクリお兄ちゃんがいる。
大きな体が目立って、すぐにわかった。
砲撃の音、銃を打つ音、飛び交う怒号
走り回る兵士たちの足音
騒々しいはずのその場所で
私の周りだけ、静かで時が止まったように感じる。
なのに、心臓の音だけはドクドクとうるさい。
ダメ。これから彼らとの戦いが始まる。
冷静にならなくちゃ。
大きく深呼吸をして、もう一度敵船に目をやる。
カタクリお兄ちゃんの他には、ペロス兄に
スムージー姉さん、クラッカー兄さんまで。
精鋭が揃ってる。
きっと大事な取引だったんだな。
…なんて、わざとどうでもいいことを考えて
平静を取り戻そうとした。
「何してる!ミドリ!さっさと行くぞ!!」
いつの間にか軍艦はタルト船へ着けていて
兵士たちは武器を手に乗り込んでいった。
不安になっていてもしょうがない。
前髪を確認して、私も仲間達に続く。