愛に生きて 後編/カタクリ
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〜愛に生きて 後編〜
ボーっと水平線を眺めていた。
青々と雲ひとつなく晴れ渡っている空の下
大きな軍艦は順調に海の上を進む。
「……はぁ…」
清々しい天気に似つかわしくないため息が漏れた。
「気分が乗らないか?」
隣にやってきたのはステンレス中将。
この辺りを取り仕切る、私の上司でもあり
ただの小娘だった私を
少佐にまで鍛え上げてくれた恩人でもある。
「実に10年ぶりか。無理もない。」
中将は他人事のように笑った。
「隠れてていいですか?私。」
「そんなわけあるか。仕事はきっちりこなしてもらう。私情は挟むな。」
「ですよね……」
わかりきっていた返事に、もう一度ため息を吐く。
この船が向かっている場所は、とある島の港。
ビッグ・マム海賊団の取引が
その島で行われるという情報を聞きつけて
支部から船を出したところだった。
ビッグ・マム海賊団……
改めて意識して
長く伸ばした前髪を右に流し、頬を隠す。
あれから10年の月日が流れ
私は28になっていた。
——生きてくれ
今でも鮮明に覚えてる
カタクリお兄ちゃんの最後の言葉。
思い出す度に、胸の奥がズキっと痛む。
お兄ちゃんの元からステンレス中将に預けられ
私はそのまま海軍に身を置くことになった。
しばらく経って、ステンレス中将から
全てを教えてもらった。
父は海軍の諜報部員で
当時勢力を伸ばしてきていた
ビッグ・マム海賊団へ潜り込んでいたこと。
ママを油断させるため
実の娘である私を連れて行ったこと。
それは同時に、私はママの
本当の子どもではなかったことも意味する。
そして、父は海軍であることがバレて
殺されてしまったこと。
父は命を狙われているとわかったとき
殺される前に、私の身柄だけでも確保するよう
本部に連絡を入れておいたらしい。
それによって迎えにきたステンレス中将に
カタクリお兄ちゃんは私を引き渡した。
この10年で
ビッグ・マム海賊団は勢力を伸ばし続け
お兄ちゃん達の懸賞金もどんどん上がっていった。
新聞や手配書で
幾度となくその存在感を見せつけられて
忘れたくても、忘れられなかった。
二度とおれ達の前に姿を現すな?
だったら私の前にも現れないでよ!
そう心の中で叫びながら
お兄ちゃん達の手配書をグシャグシャに丸めた。
何度も何度も。
そうしているうちに、いつしか私の中で
彼らへの気持ちは敵対心へと変わっていった。
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