愛に生きて 前編/カタクリ
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——ある日の昼下がり
「カタクリ様!カタクリ様!!ママがお呼びです!!」
呼び出されたカタクリが
ビッグ・マムのもとへ行くと
血相を変えたビッグ・マムがカタクリに詰め寄る。
「ミドリをすぐに始末しておくれ。」
「っ!?」
あまりにも突然で無慈悲な命令に
さすがのカタクリも驚きを隠せなかった。
「ミドリを…妹をやれるわけないだろう。何があったんだ?ママ。」
「あの子はあんたの妹なんかじゃないよ。」
「なっ……」
「全部教えてやる。納得したらおれの言う通りにするんだよ。」
ーーーーーーーー
———さかのぼること16年前
「お前の料理、気に入ったよ。うちのコックにおなり。ちょうど人手が足りなくてね。」
「光栄です。」
ロックス海賊団の壊滅後、独立し
勢力を伸ばし始めていたビッグ・マム海賊団。
そこへ現れたひとりの料理人。
ビッグ・マムは
この男の腕に惚れ込み、喜んで彼を受け入れた。
そして——
「ママ、どうかこの子をママの子として、ここで一緒に育てさせてもらえないだろうか。私の大事なひとり娘で。」
「そんなのお安い御用さ。子どもは何人いたっていいからね。」
「ありがとうございます。名前はミドリ。父と娘、このビッグ・マム海賊団に身を置かせていただきます。」
「おいでミドリ。いい子だね。」
当時若干2歳だったミドリは
父とともに、こうしてビッグ・マム海賊団に
身を置くことになった。
この時すでにビッグ・マムには
多くの子どもたちがおり、娘がひとり増えようが
特に気にも留めないことが幸いした。
ミドリは突如できた母親の存在に喜び
すぐに受け入れた。
子育てとは一種の洗脳のようなもので
ミドリは自分がビッグ・マムの
本当の子どもだと信じて疑わなくなっていた。
それは、この日から一緒に育ち
長く時間を共にしてきた兄姉たちも同じで
ミドリを本当の妹と思い、過ごしてきた。
ーーーーーーーー
「……ミドリは…血の繋がった妹じゃなかったのか……」
「父親なんてもう存在も忘れてたんだがね。ずっとここでコックをしてたんだが、そいつがミドリの婚約を聞きつけて、しつこく反対してきてね。怪しいと思って調べさせたら、あの男、海軍の諜報部員だった。」
「……スパイか。」
「父親はすでに消した。娘の世話してやってたってのに、おれ達の情報をずっと海軍に送ってやがった。まだ腹の虫がおさまらないよ。」
「……だからってミドリまで消す必要はないだろう。あいつはママのことを本当の母親だと思ってる。」
「知ったこっちゃないよ。結婚の話はもうなしだ。海軍の血筋なんて冗談じゃない。もともと余所者だ。お前がやらないならオーブンか、ダイフクにでもやらせるさね。反対しても無駄だよ。」
「……わかった。おれがやる。」
「頼んだよ。」