君に触れる
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「……どういうことだ。どうしたらいい……」
仕事を終え、シャワーを浴び
部屋へ入ったワイパーは頭を抱えていた。
自分のベッドでミドリがスヤスヤと
寝息を立てていたからだ。
いつものように明かりを点けてしまったのに
気づかないほどに熟睡している。
「部屋を間違えたか?……そんなわけねェ。」
動揺から、らしくもない独り言が漏れた。
仕方なくベッドに近づき、声をかける。
「ミドリ……」
「………」
「おい、ミドリ。」
驚かさないよう気遣った小さい声なためか
全く気付く様子はない。
ワイパーはベッドに背を預けるように床に
腰を下ろし、クシャクシャと頭を掻いた。
気持ちを落ち着かせてから振り返り
ミドリの寝顔に目をやる。
両腕で布団を抱き締め、それにすがるように
顔を押し付けていた。
眠りながらも、その表情は悲しげで
ワイパーは少し動揺した。
——一緒に寝てもいいですか?
——夫婦になったのに…
なかなかそばにいられないから……
気付いてはいたが、向き合おうとしてなかった。
ミドリは寂しい思いをしている。
おれが……させている。
ここで寝るなんて、そんな真似をさせるくらい
こいつを追い詰めてしまった。
思わず手を伸ばす。
自分の硬い指先で傷がつかないよう
できるだけ優しく頬に触れた。
柔らかい肌に指を滑らせると
ミドリは身をよじって薄目を開ける。
「ん……」
「……ミドリ…」
小さく名前を呼べば、目は見開かれ
勢いよく起き上がった。
「ワイパーさん!?ごめんなさいっ、私っ……」
ワイパーはベッドに乗り
ミドリの身体を抱き締める。
久しぶりの感覚だった。
小さく、やわらかく、そして愛おしい存在を
確かめるように、少しずつ腕に力を込める。
ミドリは完全に目が覚めており
ワイパーの行動に驚いて固まっていた。
「すまなかった。」
「……え?」
「寂しい思いをさせちまってた。」
「………でも、今はとても満たされてます。」
ミドリの手がワイパーの背中に回される。
その辿々しい仕草に高揚するが
フーッと息を吐いて自分を落ち着かせた。
「すげェ格好悪ィんだけどよ…」
静かに話し始めたワイパーの顔を
ミドリが腕の中から見上げると
居心地が悪そうに目を逸らして続ける。
「緊張するんだ。お前といるのが。前より緊張してる。なんつーか……余裕がねェ。」
抱き締めていた腕を緩めると
今度はミドリの両手を握る。
「気安く触れなくなった。どうやってお前に触れてたのかわからねェんだ。」
「………」
「でも、このままでいいわけねェな。ちゃんとする。」
熱い手のひらに優しく包まれた自分の手を見て
ミドリは瞳を潤ませる。
正直なワイパーの気持ちを知って
安心したことから込み上げてきたものだった。
嫌われたわけでも、壁ができたわけでもなかった。
「不安にさせて悪かった。」
ふるふると首を横に振ると、ワイパーはホッと
したように笑い、ミドリの髪を撫でる。
「焦った。こんなとこで寝てるから。危うく襲っちまうとこだ。」
「……襲っていいんですよ?」
その言葉に髪を撫でるワイパーの手がピタリと止まり
ミドリはその手に自分の手を重ねた。
「夫婦なんだから。」
真っ赤な顔で言葉を続けると
同じようにワイパーの頬も赤くなる。