君に触れる
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ワイパーさんの仕事は変わらず忙しそうだった。
帰りも遅く、顔を合わせるのは朝だけ。
その朝も、彼は素っ気なく
想像していたような”甘々な新婚生活”なんて
私たちには夢のまた夢だった。
「まだ起きていたのか。」
明日は仕事が休みなので
ワイパーさんの帰りを夜遅くまで待っていた。
玄関を開けた瞬間、私と目が合うと
ワイパーさんは驚いた顔をした。
「少しだけ、お話できたらと思って…」
「おれに合わせていると体を壊すぞ。あまり無理はするな。」
「別に無理なんて……」
「シャワー浴びてくる。先に寝てろ。」
「……はい。おやすみなさい。」
少しくらい嬉しそうにしてくれてもいいのに。
もしかして迷惑だった?
ため息を吐いて
2つ並んだ、私たちの部屋のドアを見る。
夫婦になったというのに、相変わらず部屋は別々。
寂しい…と思うのは私だけ?
私ばっかりワイパーさんを好きなの…?
悲観的な考えを打ち消すよう首を振る。
自分に言い聞かせる。
もともとワイパーさんは無愛想だし
顔は相変わらず怖くて、何考えてるかわからない。
でも
——おれは最初からおまえを愛していた
——もちろん、今もだ
そう言ってくれたワイパーさんを信じる。
きっと大丈夫。
部屋に入ってワイパーさんを待った。
やがてシャワーの音が止まると
隣の部屋のドアが開き、そして閉まる。
私は枕を抱えて部屋を出て、隣のドアをノックし
返事も待たずにドアを開けた。
「どうした。」
そこにはまだ少し濡れた髪をタオルで拭きながら
驚いた顔で私を見るワイパーさんがいた。
「い、一緒に寝てもいいですか?」
「なっ……」
恥ずかしさから目をキツく瞑り、勢いまかせに
そう言うと、ワイパーさんは言葉を失う。
「あの……夫婦になったのに…なかなかそばにいられないから……」
どうしたら一緒の時間を過ごせるか。
どうしたら夫婦らしくなれるのか。
私なりに考えた行動だったけど
ワイパーさんは明らかに困ったような表情。
「……ダメですか?」
「……悪い、勘弁してくれ。」
やっぱり間違えたみたい。
恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだ。
「……わかりました。おやすみなさい。」
「……あァ…」
気まずい思いを堪え、逃げるように部屋へ戻った。
悲しさと、恥ずかしさと、寂しさで
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
ちゃんと夫婦になったはずなのに
ここへ来たばかりの頃に戻ってしまったみたい。
ワイパーさんから距離を置かれてから
結婚準備で忙しかった間に
2人の間に壁ができてしまったんだ。