君に触れる
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欲しくて欲しくてたまらなかったものを
半ば無理やり手に入れ
しかし手放さなければならなくなった時
もう二度と触れられない覚悟で離れた。
全てを諦め、忘れようとした。
それなのに、結局失うことはできなくて
もう一度手にすることができた。
二度と、失いたくはない。
傷付けたくない。
自分の命よりも、大事に思えるものの存在は
何よりもおれを臆病にする。
〜君に触れる〜
家族や仲間たちから祝福され
昨日、晴れて夫婦となった私たち。
ワイパーさんと再会し、結婚が決まってからは
仕事が忙しいワイパーさんと
結婚準備に追われる私
ゆっくりと2人の時間を持つこともなく
再び一緒に暮らすタイミングも見つからないまま。
そして今日、久しぶりに帰ってきた
ワイパーさんの部屋。
「今日からまた、よろしくお願いします。」
「あァ。」
ワイパーさんは持っていた大きな荷物を
私の部屋に運んでくれた。
相変わらずの無愛想。
そして何も変わっていない、懐かしい部屋。
ここで色々なことがあった。
「おれはもう行く。荷解きを手伝ってやれなくて悪い。」
「え?これからお仕事ですか?」
「式も終えたし、また忙しくなる。今日は先に寝てろ。」
「わかりました。お仕事頑張ってくださいね。」
玄関先までついていき、笑顔で見上げると
視線と視線が交わる。
思わず身構えて、笑顔は消えた。
キス?するのかな。
だって、もう夫婦になったし
夫婦になる前にだって何度か……
頬が熱くなる。
思わず、唇を噛んだ。
が、ワイパーさんは向きを変えドアを開けた。
「……行ってくる。」
パタン、と閉まるドアの音が妙に虚しかった。
「………」
昨日、皆の前で永遠の愛を約束して
誰が見ても、この上なく幸せな2人だった。
こうしてまた一緒に暮らして、毎日を過ごして
大鐘楼の前で誓った愛を育んでいく。
幸せな毎日が始まった。
はずなのに……