第一章 〜めぐり会い〜
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それから3日が経った日。
仕事が休みだったので
朝から母と家の掃除をしていた。
——ドンッドンッ
乱暴に玄関ドアが叩かれ
私と母は手を止めて顔を見合わせた。
はいはい、と母が玄関へ向かったかと思うと
すぐに戻ってくる。
「ミドリ、ワイパーさんよ。」
ワイパーさんって……あの人!?
「……えっ!だって…」
「きっとお父さん、まだちゃんとお断りしてないのよ。」
母も困ったような顔をしたので
仕方なく玄関へ向かった。
そこには仁王立ちでいるワイパーさんの姿。
うちの小さな玄関のせいか
あの時よりも大きく見え、迫力があった。
今日は非番なのか、隊服は身に着けておらず
膝上までのショートパンツを履いているが
やっぱり上半身は裸。
そしてあの睨みつけるような鋭い視線も
相変わらずだった。
「ワイパーさん、へそ——」
「ガン・フォールに会いに行けと言われた。来い。出かけるぞ。」
挨拶する隙も与えてもらえず
突然の誘いに戸惑いを隠せない。
「あの…どこへ?」
「決めてねェ。都合が悪ィのか。」
「悪くはない…ですけど……」
「さっさとしろ。」
「は…はい。かばん、取ってきます。」
断ったら殺されるんじゃないかと思うほどの
威圧するような視線と、低い声で言われ
仕方なく部屋へかばんを取りに行った。
「言いづらいかもしれないけど、これを最後にって、それとなくお断りしてきなさいね。」
影からやりとりを見ていた母が耳打ちをする。
お断り…できるだろうか……
玄関で待つワイパーさんをチラリと見る。
怖い……
「頑張ってみる……」
ひきつった笑顔を母に向けて
重い足取りで家を出た。
ーーーーーーーー
やってきたのはラブリー通り。
どこかの店に寄るでもなく
ただ歩くワイパーさんの少し後ろをついていく。
「ワイパーさんだ。」
「へぇ、あの人が!」
「デカいな。それにやっぱり強そうだ。」
「カッコいい〜……」
こうして街中を歩いていると
通り過ぎるほとんどの人が、彼を見て振り返る。
聞こえてくる皆の反応で
ワイパーさんがやっぱり有名人なんだとわかった。
私が今まであまり気にしていなかっただけで
この人は、スカイピアの人から見れば
神様を、国の皆を守る英雄なんだ。
怖い印象しかなかった彼への見方が
少しだけ変わった。
それにしても……
「………」
「………」
家を出てから全く会話がない。
私から何か話した方がいいのだろうか…
と思っても、何を話したらいいのかもわからない。