最終章 〜あなたとなら〜
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「今日も来とったそうだぞ。」
神の社内の広場にて
訓練を終え、汗を拭くワイパーのもとへ
ガン・フォールが現れた。
「あ?」
「神様、それは今禁句で……」
不機嫌そうに額に血管を浮き上がらせる
ワイパーを見て
カマキリが神を止めようと間に入るも
それも虚しく、ガン・フォールは話を続ける。
「あの娘だ。健気だの。毎日毎日、好きな男のため。」
「うるせェ。それ以上言うんじゃねェ。」
「本当にお前はそれでいいのか。」
「黙れって言ってるだろ!!」
広い神の社内に低い怒号が響く。
「ワイパー……」
ガン・フォールは気にする様子もなく
ワイパーにあるものを差し出した。
「なんだよ。」
「あの娘が預けていったそうだ。」
「………」
ワイパーは一瞬迷ったように動きを止めるも
トーンダイアルを受け取り
それを徐に隊服のポケットへ入れると
背を向けて歩き出す。
家に帰るなり、隊服から取り出されたそれは
ダイニングテーブルへと置かれた。
すぐに聞くことができず
夕食を食べ、筋トレをし、シャワーを浴び
自分を落ち着かせようといつも通りに過ごす。
それでもいよいよすることがなくなり
ワイパーはトーンダイアルを手に取って
自室へと入った。
カチ——
深呼吸をひとつして貝の殻頂を押すと
聞こえてきたのは
少し震えた声で静かに話し始めるミドリの声。
久しぶりに聞く声だった。
——ワイパーさん、元気にしてますか?
ミドリです。
えっと……
神の社にまで会いに行ったりしてごめんなさい。
諦めようとしました。
何度も何度も、どうにか忘れようとしました。
でもダメで……
すごく苦しいのに……
私はもう、あなたじゃないとダメで……
あなたが鬼でもいいです。
これからどんなことがあっても
ワイパーさんとなら平気です。
っ……一緒にいたい。
明日、前に連れて行ってくれた
シャンドラの遺跡で待ってます。
これが最後にします。
来てくれなかったら
もう会いに行くことはしません。
最後まで迷惑をかけて
本当にごめんなさい——
「……ミドリ…」
ひとりぼっちの暗い部屋の中。
ワイパーはトーンダイアルを強く握りしめた。