最終章 〜あなたとなら〜
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「今日も行くの?」
カフェでの仕事を終えて帰り支度をしているとき
ラキにそう聞かれた。
「うん。今から行ってくる。」
「もう何回目よ。」
「数えてないけど……10回目くらいかな。」
ラキにはそう言ったけど、あれから二週間
私は毎日会いに行っていた。
もちろん姿を見られない日の方が多くて
会えてもこの前のように無視されてしまう
だけなんだけど
それでも会いに行くことで
”私はまだあなたが好きだよ”って
伝えられている気がして。
「あたしも一緒に行くよ!もう黙ってらんない!あんのクソ野郎!!」
「待って待って。怒らないで。私が勝手にやってることだから。」
「カマキリのヤツも!もっとワイパーに言ってやればいいのに!!」
「………」
「………ミドリ?大丈夫?」
「今日で最後にしようと思うんだ。」
「最後って……」
ずっと考えてた。
カマキリさんとラキに背中を押してもらって
ここまで頑張ってこられたけど
何度拒否されてもずっと追いかけ続けられるほど
私は強い人間じゃない。
「ちょっと…疲れちゃって……」
「……ミドリ。」
「もう会えないならワイパーさんのことなんて忘れたいっ……」
誰もいないカフェの休憩室。
思わず本音が漏れて
私はラキの腕の中で、思いっきり泣いた。
何度も思った。
嫌いになれたらどんなに楽だろう。
でも、そう思えば思うほど
思い出すのは、時おり見せてくれた優しい笑顔。
クセのあるタバコの匂いも
いつも不機嫌そうなその目つきも
太く逞しいのに優しい手の温もりも
忘れるどころか、今でも鮮明に覚えている。
最初はあんなに怖い人だと思ってたのに
私に触れる全てが優しかった。
どんなにひどいことをされても
嫌いになんてなれるはずがない。
「ん。」
別れ際、ラキに手渡されたのは
ひとつのトーンダイアル。
「これ……」
「本当は会って言ってやりたいこと、たくさんあるんでしょ?今日も会えるかわからないんだし、最後にするってんなら、これに思いの丈をぶち込んでやりなよ。」
「……ありがとう。」
「文句言ってやるんだよ!?あんたは何言ったって許される!思いっきり言ってやんな!わかったね!?」
「うん、わかった。」
トーンダイアルと一緒にラキに元気をもらって
私は神の社へ向かった。
ーーーーーーーー
やっぱり今日も、会うことはできなかった。
”今日が最後”って日に
もしも会うことができたら…
話せるチャンスがあれば…
そんな奇跡が起これば
まだやり直せるんじゃないかって
本当は少しだけ期待してた。
ラキにもらったトーンダイアルを取り出して
殻頂を押す。
——カチ
深呼吸して、震えそうな声を落ち着かせてから
言葉を吹き込んだ。
「ワイパーさん、元気にしてますか——」