最終章 〜あなたとなら〜
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「神様がお戻りだ!」
「お帰りなさいませ!!」
しばらくして門の前が慌ただしくなり
私は慌てて立ち上がる。
神様を囲むように護衛隊の皆が帰ってきていた。
すぐにその姿を見つける。
「ワイパーさん!!」
思わず大きな声が出た。
その場にいる全員が私に注目したけど
そんなこと気にもしていられないほど必死だった。
もちろん、ワイパーさん本人もこちらを見る。
案の定彼は驚いていて、大きく開かれた鋭い瞳と
完全に目が合い、私は思わず走り出す。
けど、その足をすぐに止めた。
ワイパーさんが顔を逸らして
門の中へと入って行ってしまったから。
………無視、された。
「おいっ、ワイパー!」
見かねたカマキリさんが呼び止めてくれたけど
振り返りもせず、足早にいなくなってしまった。
カマキリさんが私にも何か
言葉をかけてくれた気がしたけど
頭に入ってこないくらい、ショックで思考が
停止した。
目の前が真っ暗だ。
「すみません。お引き取りください。」
しばらくその場に立ち尽くしていると
辺りは元通り人気がなくなり
先ほどの門番の人が気遣いながらそう言って頭を下げた。
私は仕方なく、神の社を離れた。
「ミドリちゃん!」
しばらく歩いたところで、ふいに呼び止められ
涙で濡れた目元を拭いて振り返る。
「カマキリさん……」
「大丈夫…じゃないよな。送ってく。」
カマキリさんはすぐに私が泣いていたことに
気付いたようだった。
「大丈夫です。ひとりで帰れます。」
「じゃあ少しだけ。」
そう言って私の隣に着いた。
「あんな態度取られて、こんなことお願いするのは変だけどさ……また会いに来てやってよ。」
「え、でも……私、迷惑でしたよね。」
「それでもあいつは、嬉しいと思う。」
「………」
「ワイパー自身、まだ迷ってるんだ。特に何か言ってたわけじゃねェけど……まだ君のこと、好きなんだと思う。それはわかる。」
「だったらどうして……」
「まァそう思うよな。不器用な奴なんだよ。君を二度と危ない目に遭わせたくないから突き放す。今はそれしかやり方がわからねェんだと思う。」
「………」
「すげェ勝手だけど…あいつのことまだ好きなら、諦めねェでいてくれないか。」
「………もちろん、まだ好きです。」
思わず立ち止まってそう言うと
同時にまた、涙が溢れた。
カマキリさんはそれ以上何も言わず
最後に頭をポンと撫でて、帰って行った。
カマキリさんとラキ
2人が背中を押してくれた。
諦めなくていい。
好きでいていいんだって。
その日から、何度も何度も
神の社へ足を運ぶ日々が始まった。