最終章 〜あなたとなら〜
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「ミドリ?少し痩せた?」
「え?そうかな。」
「まだ休んでても良かったのに。」
一週間ぶりにパンプキンカフェへ出勤すると
ラキが心配そうに声をかけてくれた。
「うん。病気なわけじゃないし、いつまでも休んでいられないし。」
「ワイパーから連絡は?」
ふるふる、と首を横に振ると
ラキは「そっか」と寂しそうに答えた。
「婚約破棄されたみたい。あはは!もう笑うしかないよね!」
「やめな。見てて痛々しい。辛いなら無理するんじゃないよ。」
わざとらしく明るく振る舞うと軽く頭を叩かれた。
「……無理にでも笑っていないと、心が崩れそうなんだもん。」
笑顔をやめて素直にそう言うと
今度は優しく頭を撫でられる。
久しぶりの誰かの温もりに涙を誘われるけど
ぐっと堪えた。
「カマキリに色々聞いてみようと思ったんだけどさ、最近仕事が山積みみたいで会えないんだよ。きっとワイパーも忙しいんだと思うよ。」
「そうなんだ……」
「……会いたいなら、待ってるだけじゃなくて行ってみれば?」
「……神の社へ?」
「まァ、誰でも入れる場所じゃないから、会えるとは限らないけど。何もせずにいるよりはいいんじゃないの?」
「………」
ずっと考えていたことだった。
神様のところへ行けば、ワイパーさんがいる。
きっと会える。
でも、彼は
お母さんに私を迎えに行かせたくらいだし
もう会いたくないのかもしれない。
それを思い知ることになるのが怖くて
行けずにいた。
——何もせずにいるよりはいいんじゃないの?
「………よし!」
ラキの後押しを受けて、私は神の社へ向かった。
ーーーーーーーー
「……来ちゃった…」
ここへ来るのは久しぶりだった。
ワイパーさんのお見合い相手に選ばれて
お母さんと一緒に会いに来たとき以来だ。
「何か御用ですか?」
パチっと目が合った門番の人に声をかけられる。
「あの……護衛隊のワイパーさんに…会いたいんですけど……」
「失礼ですが、お名前は?」
「ミドリといいます。」
かなり勇気を振り絞った。
門番の人はやはり不審に思ったのか
訝しげな表情をしながらも何やら誰かと
連絡を取り合っているようだった。
「すみませんが、今護衛隊は外へ出ているようで。」
「そうですか…わかりました。」
門番の人の目も気になるし
このまま帰ろうとも思ったけど
せっかくここまで来たから
そのまま待ってみることにした。
門が見える少し離れた場所に座り込む。
みっともなくてもいい。
もう、嫌われているかもしれない。
それでも、どうしても会いたい。
まだ好きなの。
失いたくない。