最終章 〜あなたとなら〜
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「来ないで!!」
ジーナさんは包丁を私の顔に向けた。
「あんたの大事な人が傷つくわよ?」
「くっ……」
銃を構えた神隊も、ワイパーさんも動けない。
「やるならおれをやれ!!ミドリは関係ねェだろ!!」
「それじゃ意味ないのよ!!」
私の腕を掴む左手も、包丁を持つ右手も
強く震えていた。
彼女も人を傷付けることに恐怖があるのが
見てわかった。
でもそれ以上に、大事な人を失ったことへの
怒り、悲しみ、憎悪の念が大きくて
ここまで追い詰められてしまったんだ。
でも、罪を犯すのは間違ってる。
どうにか、この状況を変えられないかと
必死に考える。
「………どうぞ。」
「なっ……」
「私を傷付けたいのなら、どうぞ。」
そう言うと、ジーナさんの手はさらに震え
明らかにうろたえていた。
「私を傷付けることで、ワイパーさんが許されるのなら。」
「何言ってんだ!やめろ!!」
ワイパーさんが大きな声で叫ぶ。
私も、額に汗が滲んでくる。
もしかしたら本当に
刺されてしまうかもしれない恐怖からだった。
「刺されるのは嫌です。でも、私はワイパーさんの妻です。ワイパーさんが罪を犯したというのなら、一緒に償います。」
「っ………うあーー!!」
「ミドリ!!!!」
ジーナさんが包丁を振り上げる。
恐怖から私は顔を逸らした。
——カランカランッ
包丁が床に落ちる音がして顔を上げると
ジーナさんは、床に突っ伏して
大声をあげて泣いていた。
2人の神隊が彼女に駆け寄り、身柄を抑える。
同時にワイパーさんは私のところへ来てくれて
手足を縛っていたロープを外しにかかった。
「ジーナさん…よかった……」
思わず私も涙が出た。
「あなたが誰も傷付けなくて。」
「うるさい!!一生恨んでやるから!!あんたも!!あんたの恋人も!!」
私たち2人に向かってそう叫びながら
ジーナさんは神隊に連れていかれた。
ワイパーさんは私のロープを解き終えると
跡が残った手首を優しくさする。
何も言わず、眉間に皺を寄せ、悔しそうな表情で。
「………」
「見つけてくれて、ありがとうございました。」
「……医者に連れて行く。」
そう言ってワイパーさんは私を抱き上げる。
「大丈夫です。それより…家に帰りたい。」
私はワイパーさんの太い首に力一杯抱き付いた。