最終章 〜あなたとなら〜
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もぬけの殻だった家を飛び出し
一晩中、探し回った。
ミドリの実家、カフェの周辺、ラキのところ。
思い当たる場所は全てあたった。
「連絡もなくいなくなるなんて、あの子らしくない!何かあったのよ!」
他にどこを探せばいいのかわからず
あてもなく街中を探し回るおれに
ミドリを心配したラキとカマキリも
着いてきてくれた。
「何かってなんだよ。」
「事故にあったとか、攫われたとか?」
「縁起でもねェな、それ…」
「…攫われた……?」
どうしてミドリが……
誰かに恨まれるようなヤツじゃない。
と、ひとり思い当たる相手を思い出す。
——この人殺し!!
「あの女だ!!」
「女?」
「すぐに女の家を調べる!」
恨まれているのはミドリじゃない。
このおれだ。
ーーーーーーーー
………
………
意識が戻ると、手足を縛られて
テーブルの足に固定されていた。
もちろん、身動きなんて取れない。
変な薬品を嗅がされたせいか
目が覚めたときから、ずっとひどい頭痛がする。
私を攫った女の人は
同じ部屋の隅で膝を抱え、ずっと泣いていた。
ここは彼女の家みたいだ。
あの時、ワイパーさんに向かって
「人殺し」と叫んでいた彼女。
パンプキンカフェに何度か来てくれたことのある
お客さんでもあった。
「名前を…聞いてもいいですか?」
あまり刺激しないように、静かに声をかけてみた。
「……ジーナ。」
彼女は顔を上げ、一言そう名乗った。
「ジーナさん…私は逃げないので、これ外してもらえませんか?じゃないと…本当にジーナさん、犯罪者になってしまいます。」
「嫌よ!外さない!!」
「……じゃあ教えてください。なぜ、こんなことを?」
「うっ…うう……」
ジーナさんは私の方を見ようともせず
ただただ泣いていた。
棚の上に飾られている写真には
彼女の姿と、その隣に仲の良さそうに映る男の人。
きっと、亡くなったご主人だ。
写真の彼女は
今のジーナさんと同じ人と思えないほど
幸せそうな笑顔を浮かべている。
ご主人を、この幸せを失ったことで
ワイパーさんをひどく恨んでいるんだ。
「………あの日たまたま、あのカフェで聞いたのよ。」
しばらくの沈黙の後、彼女の方が口を開いた。
「あんたがあの男の恋人だって。」
「……そうだったんですか。」
「私はあの男に世界で一番大事な人を殺された。あの男が幸せになるなんて…許せない。」
思い立ったように立ち上がった彼女は
近付いてきて、私を真っ直ぐに見下ろす。
ずっと泣きじゃくっていた顔は涙でボロボロで
生気のない瞳で私を見ていた。
震えるその手には包丁。
「!!……ジーナさんっ、やめて……」
「大事な人を失う苦しみを…あの男にも……」
「やめてくださいっ!!」
その時だった。
いきなり部屋のドアが開く。
「動くな!!」
入ってきたのは数人の神隊。
そしてその後ろから
「ミドリ!!ここにいるのか!?」
「ワイパーさん!」