第一章 〜めぐり会い〜
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指定された日。
仕事で立ち会えない父を残して
母と2人、神の社へと向かった。
「まぁ…ここが神様のいる場所…なんて神々しいの…」
「うん、そうだね。」
初めての神の社に目をキラキラと輝かせる母。
確かにすごく豪華で
滅多にお目にかかれない建物なのだろうけど
これからのことを考えると
とてもそれを堪能する余裕はない。
この日のために母が買ってくれたワンピースは
いつも以上に可愛く見えると褒めてもらったけど
落ち着かないし、なんなら余計に緊張する。
と、表情に出ていたのか
母に背中をパシッと軽く叩かれた。
「ニコニコして。」
「はーい…」
そんなこと言われても気分が乗らないのだから
仕方ないじゃない。
と、社の中から案内役と見られる
従者の男の人が出てきたので
顔の表情をできるだけ柔らかくした。
案内された場所には
この国の神様、ガン・フォール様の姿。
こんなふうに面と向かって顔を合わせることは
滅多にないから、緊張から自然と背筋が伸びた。
母に促されるまま、頭を下げる。
「ミドリだな。可愛らしいお嬢さんだ。こんなところまで苦労かけた。早速見合い相手を紹介したいところなんだが……あやつ、まだ来とらんのか。」
神様が従者に目配せをすると
従者は「申し訳ありません。間もなく。」と
返事をした。
お見合い相手の人がもうすぐ来る。
それなのに……
私は部屋を見回す。
「……ねぇ、お母さん…これって……」
「……えぇ、おかしいわね…」
どういうわけか、この場には神様とその従者
そして私と母の4人だけ。
呼ばれているはずの他の女性たちの姿が一切ない。
「あの……」
バンッ——
他の方たちは?と母が尋ねようとした瞬間
勢いよく扉が開いて、男の人が入ってきた。
「やっと来おったな。客人を待たせるとは何事だ。」
現れたその人の迫力に、私と母は固まる。
まず目を引くのは背中まで伸びている長髪。
神の護衛隊の隊服であるはずのジャケットは
上半分を脱いでいて
鍛えられた上半身が露わになっている。
顔の左側と左半身に大胆な刺青。
それに咥えタバコ。
そしてなんといっても、顔が怖い。
「うるせェ。こっちにだって都合があるんだ。急に呼び出すんじゃねェ。」
さらに、驚かされたのは神様に対してのこの態度。
地を響かせるような声の低さにも迫力を感じる。
でも、ふと気が付いた。
……この人、私会ったことある。
「ほれ、お前が選んだ娘だ。挨拶せい。」
神様にそう言われ、彼の視線は真っ直ぐに
私を捉えてきたので思わず身構える。
「……ワイパーだ。」
たった一言、ぶっきらぼうにそう言った、
ワイパーさん。
この人が……私を選んだ人。