第五章 〜彼の嫉妬〜
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次の日の夜。
食事会は盛り上がり、解散したのは夜の11時。
ラキもコニスもいたし
時間を忘れて楽しんでしまった。
ワイパーさんも遅くなると言ってたけど
もしかしたらもう家に帰っているかも。
皆に別れを告げて、足早に家路を歩く。
「ミドリちゃん!」
と、不意に後ろから声をかけられ、振り返れば
カフェの料理長がこちらに向かって来る。
「料理長、お疲れ様です。」
「ミドリちゃんもこっちの方向なんだな。もう遅いし、送っていくよ。」
「はい、ありがとうございます。」
少し急いでいるんだけど…と思ったけど
せっかくの好意なので断りきれず、隣を歩いた。
「仕事はだいぶ慣れたみたいだな。」
「はい、皆さんのお陰で。楽しく働かせてもらってます。」
開発中の新しいカボチャ料理のこと
厨房の若いスタッフ達がラキを怖がっていること
真面目な話からおかしな冗談まで
料理長は色々なことを話してくれた。
飽きない料理長の話に相槌を打ちながら
隣を歩いていると、正面から声が聞こえた。
「ミドリ!!」
「!!」
薄暗い道だったけど
その人影で相手は誰かすぐにわかった。
「ワイパーさん!?」
「あァ、彼が。あの有名な。」
料理長もワイパーさんを知っているようだった。
2人で近くまで行くと
ワイパーさんはいつもと様子が違くて
少し焦っているような
落ち着きをなくしているような
鋭い視線はいつものことだけど
何かに怒っているようにも見える。
「どうしたんですか?こんなところで…」
「……散歩だ。」
「こんな時間に?」
やっぱり、いつもと様子が違う。
ワイパーさんの視線は私ではなく
隣の料理長へと真っ直ぐに向けられていた。
あぁ、そんなふうに睨んでたら
怒ってるって勘違いされちゃう…
その鋭い視線に、料理長が気を悪くしないかと
内心不安になる。
「……なるほど。そういうことか。」
でも料理長にそんな様子はなく
何かに納得したように笑い、私の肩に手を置いた。
「方向も同じだったし、遅い時間になってしまったから送ってきただけだ。君が心配するようなことは何もないよ。」
「………」
料理長がワイパーさんへ向けた言葉の意味も
私にはよくわからず
ワイパーさんも彼を睨んだまま何も言わないから
妙な空気が一瞬流れる。
と、料理長は私たちを残して歩き出した。
「じゃあ、ミドリちゃん、また店でな。」
「あ、はい、ありがとうございました。」
料理長の背中に手を振るその手を強く掴まれる。
「帰るぞ。」
それままワイパーさんは
私を引っ張るように歩き出した。
勢いのままに、その少し後ろを着いていく。
やっぱりおかしい。
いつもの彼じゃない。
こんなふうに、少し乱暴に手を握られたのは
初めてだった。