第五章 〜彼の嫉妬〜
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窓からの光に眩しさを感じる。
「ん……」
ふと目を開けて、すっかり上りきっている
お日様の光に、慌ててベッドから飛び出た。
「ごめんなさい!私、今起きて…」
部屋から出ると、ワイパーさんの姿はない。
開きっぱなしの隣のドアから部屋を覗いても
やっぱりそこにもいなかった。
もう、仕事へ行ってしまったんだ。
「はぁ……」
やってしまった。
朝が唯一、ワイパーさんといられる時間なのに
寝坊するなんて…
でも昨夜は……
ワイパーさんが手を握ってくれたこと
寝ぼけながらも、ちゃんと覚えてる。
それだけで、気持ちは満たされていた。
握られた自分の手を見るだけで、頬が緩んでくる。
と、そんな場合ではないことを思い出す。
「やばい、私ももう出ないと!」
急いで身支度を済ませ、仕事へ向かった。
ーーーーーーーー
「またここかよ。」
「いいじゃねェか。他に行きたい店もねェし。ミドリちゃんに会えるぞ。嬉しいだろ?」
「うるせ。」
カランカラン、とお店の扉が開いて
入ってきたお客さんを出迎えに行くと
そこにはワイパーさんとカマキリさんの姿。
「いらっしゃいませ。お二人揃って、休憩ですか?」
思いがけずワイパーさんに会えて
自然と笑顔になる。
「あァ。午前中はこの辺りの見回りだったんだ。あ〜腹減った。」
「お疲れ様です。どうぞ。」
カマキリさんが前を通り過ぎ
後ろを歩くワイパーさんに小さく耳打ちをする。
「ごめんなさい、今朝、寝坊しちゃって……」
「あァ。気にすんな。」
カマキリさんに聞かれたら恥ずかしいと
汲み取ってくれたのか
ワイパーさんも小声でそう答えてくれて
お礼の気持ちも込めて笑顔を返す。
「ミドリちゃん!こっちお願いできるか!?」
「あ、はい!すぐに!」
2人を席に通したところで呼ばれ
忙しそうにしている料理長の手伝いへ向かった。
「誰だ?あの男。」
「さァ、知らね。」
「よ。いらっしゃい。」
「おう、ラキ!」
ラキはミドリの代わりに2人のテーブルへ
水の提供にやってきた。
「なァ、あの男誰だ?この店、男の店員もいたんだな。」
「え?あァ、料理長だよ。あまり普段は厨房から出てこないんだけど。」
2人の会話にさほど興味もなさそうなワイパー。
その前に水を置きながら
ラキはニヤニヤとした顔を近付ける。
「いい男だろ。ミドリがお気に入りみたい。」
「……関係ねェ。」
「あはは!強がっちゃって〜」
「おい、やめとけ。」
カマキリに止められ、ラキはニヤついた顔を
ワイパーへと向けたまま、席を離れていった。
ふと、ワイパーは料理長とミドリへ目をやる。
団体の客でもいるのだろうか。
多くのカップを並べ、コーヒーやらお茶やら
カボチャのジュースやらを
それぞれ2人で忙しそうに準備していた。
手は動かしながらも、話が盛り上がっているのか
時おり顔を見合わせて笑う様子も見られる。
「………チッ…」
ワイパーが舌打ちしたのを
カマキリは聞き逃さなかった。