第五章 〜彼の嫉妬〜
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「あの…今日も遅くなりますか?」
2人でテーブルに向かい合い
朝食を食べながらそう聞くと
ワイパーさんはベーコンを頬張りながら頷いた。
「あァ。帰れるかもわからねェから、先に寝てろ。」
「…わかりました。」
パンプキンカフェを青海人に制圧された事件以来
スカイピア全体の見回りや防衛の仕事が増え
神の護衛隊であるワイパーさんも
これまで以上に忙しそうだった。
私が寝た後に帰ってくる日も多く
顔を合わせるのは朝のこの時間くらい。
まだまだ2人でいると緊張するし
顔を合わせればドキドキする。
でも、少しずつワイパーさんとの距離が近付いて
普通に話しかけられるようになってきた。
そんな矢先なのに
一緒にいられる時間はほとんどない。
同じ家で暮らしているのに。
「……どうした。」
私の元気がないことに気付いてくれたのか
仕事へ向かうために部屋で身支度しながら
開け放たれたままのドア越しに気にかけてくれた。
「……私、少し寂しいです。ワイパーさん最近忙しそうで……」
こんなこと言ってもどうにもならないことだし
困らせるだけなのもわかっていたけど
思ったことはきちんと全て話そう、と
そう決めていた。
「わがままでごめんなさい。」
「謝ることはねェ。言ったろ?何でも言えって。その方が、おれも助かる。」
部屋から出てきたワイパーさんは
やっぱり少し困ったように頭を掻いていた。
「ただ、今は仕事が立て込んでんだ。どうしてもお前に構ってられねェ…悪いな。」
「じゃあ私、ワイパーさんが帰ってくるの待ってます。そしたら夜にも少し会えますよね。」
「何時になるかわからねェよ。先寝てろ。」
そのまま私の前を通り過ぎ、玄関のドアを開ける。
「…わかりました。いってらっしゃい。」
「あァ、行ってくる。」
パタン、とドアが閉まり
部屋の中はシン…と静まり返る。
虚しく上げられたままの
ワイパーさんへ降った手。
ふと、その手のひらを自分へ向けた。
——ほらよ。
ワイパーさんと繋いだ、手。
あの時の感触は、今でも覚えてる。
「また繋ぎたいな……」
唇から息を吐くように自然と出た言葉。
その言葉にハッとする。
”ワイパーさんに触れたい”
それが、今の私の気持ち。
顔が熱くなる。
一緒にいられないから、寂しいわけじゃない。
ワイパーさんの温もりを知ってしまったから
私はもっと、それが欲しいんだ。