第三章 〜結婚できません〜
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「ミドリ!?なんだこんな時間に!」
「ほんと!急にどうしたの?」
お父さんとお母さんのいる家に着いたのは
もう深夜。
寝巻き姿の2人は、こんな時間に
突然帰ってきた娘を前に、もちろん驚いていた。
「帰ってきたの。あの人とは暮らせない。」
2人の顔を見ることができなかった。
結婚する。一緒に暮らす。
そう宣言してこの家を出て行ったのに
3日もせずに出戻ってくるなんて情けない。
「どうしたってんだ?喧嘩か?喧嘩なんて夫婦ならよくあることだ!」
励まそうとしてくれてるのか
ははっと笑いながらそう言うお父さんを
お母さんが「ちょっと黙って」と睨みつける。
「ここへ帰ってくること、ワイパーさんは納得してる?」
「………」
「何があったのかはわからないけど、ちゃんと話し合ったの?」
話し合う?
そんなことしてない。
あの人とはできない。
「逃げてたって仕方ないのよ。夫婦になるんだから、言いたいことは言って、ちゃんと話し合わないと。」
「ワイパーさんは…私を妻だなんて思ってない。」
「だから…ワイパーさん本人がそう言ったの?」
「………」
ワイパーさんは……
——嫁にもらうからには、このくらい当然だ
——こいつを嫁にする
そうだ。
あの人はいつも、恥ずかしげもなく
私を”お嫁さん”と、そう言ってくれてた。
「……そういうわけじゃないけど…」
でも、じゃあどうして
私にこんな寂しい想いをさせるの?
「……とりあえず、今日はもう休みなさい。」
お母さんに頭を撫でられると
目頭が熱くなってくる。
「落ち着いたら、ちゃんと話し合うのよ?」
最後にそう言って、お父さんと一緒に
寝室へ戻っていった。
私も自分の部屋に閉じこもり
膝を抱えて、そこに顔を埋める。
私たちは、話すことをしなかった。
ワイパーさんが無口なことは
最初からわかっていたことだけど
私も、自分の気持ちを言うことをしなかったし
彼の気持ちを聞く努力もしなかった。
カマキリさんやラキに嫉妬して
笑いかけてくれないことにモヤモヤして
自分から歩み寄ろうともしなかったくせに
勝手に終わりにしようとして
——あなたとは結婚できません!
突き放してしまった。
涙が溢れてくる。
本当はうまくやりたかった。
ワイパーさんのこと、好きになれたらいいなって
こっそり思ってた。
もう、遅いだろうか。