第三章 〜結婚できません〜
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「あー楽しかった。」
「じゃあまたな、ワイパー。ミドリちゃんも。」
「おう。」
「おやすみなさい。」
ラキとカマキリさんと店先で別れ
ワイパーさんと並んで帰路に着く。
「楽しかったですね。カマキリさんて、話の面白い人。」
「あァ、そうだな。」
街灯が灯るほんのりと明るい夜道を並んで歩いた。
「………」
「………」
それ以上の会話はなく
楽しかった時間の余韻はすぐに消えた。
やっぱり、私と2人になると
こうなってしまうんだ。
そっと隣を見る。
私とは反対側の空に向かって煙を吐く
ワイパーさんの表情は見えない。
視線に気付いたのか
ワイパーさんもふとこちらを見て
パチリと目と目が合う。
が、すぐに逸らされてしまった。
その瞬間、私の中で何かが切れた音がした。
歩みが遅くなり、やがて動けなくなる。
「……おい、どうした。」
立ち止まった私に気付いたワイパーさんが
振り返った。
「……楽しいですか?」
「あ?」
真っ直ぐに、ワイパーさんを見上げて聞いた。
「……ワイパーさんは、私といて楽しいですか?」
眉間に皺を寄せて私を見下ろす。
なんなんだ、急に……そんなことを言いたげな
いぶかしげな表情。
「私、今日…初めて見ました。ワイパーさんが笑ってるところ。」
「おれが?」
「私と2人のときは…笑ってくれたことありません。」
「……それがどうした。」
顔をそらしてガシガシと頭を掻く。
困っているような、面倒くさがっているような
そんな仕草。
なんだか、悲しくなった。
「……もう、いいです。」
思いっきり頭を下げる。
「私、あなたとは結婚できません!」
「あ?」
「ごめんなさい!」
「なっ…お、おいっ!」
そのままワイパーさんの顔も見ずに走り出す。
少し焦った様子で呼び止められたけど
構うことなく走り続けた。
きちんと話もせず、理由も言わずに逃げ出した。
一方的に終わらせてしまった。
酷いことをしてしまった。