第三章 〜結婚できません〜
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「本当に、いいんだな?」
もう一度、ワイパーさんから確認された。
本当は怖い。逃げ出したい。
どうしてあんなこと言ってしまったの?と
バカな自分を責め立てる。
でも、もう遅い。
ここまできたら、もう勢いだ。
私は目を逸らさずに、頷いた。
それを合図に、ワイパーさんが両手を
私の肩に乗せる。
そのまま促されるように後ろのベッドへと
寝かされた。
私を組み敷いて
体をまたぐようワイパーさんが膝をつくと
ベッドの軋む音が鳴った。
顔の両側に手をつかれて真っ直ぐに見下ろされ
恥ずかしさから思わず視線を逸らした。
体は石になったように硬く、動かない。
肩から流れ落ちたワイパーさんの長い髪が
頬から首筋にあたって
ふわりと石鹸のいい香りがする。
それをはらうように、大きな手が頬に添えられる。
やっぱり、熱い手のひら。
こめかみから顎のラインをすっと撫でられ
太く、たくましい指先なのに
その仕草は意外なほどに優しくて
逸らしていた目をもう一度、前へ向けた。
先ほどよりも近くにあるワイパーさんの顔。
あの鋭い視線がだんだんと近づいてくる。
始まる?
キス、するのかな?
そう思った途端、身体が震えた。
心臓は破裂しそうなほどにバクバクとうるさい。
どうしよう。
やっぱりこわい。
でも、拒否することはできない。
受け入れるしかない。
ギュッと目を閉じた。
「………」
「………」
でも、唇や顔に何かが触れる感触はなくて
それどころか、もう一度ベッドがきしむ音がして
目を開けると、ワイパーさんは私から離れ
ベッドの端に座った。
「……今日はいい。」
言いながら、タバコに火をつける。
「あの……どうして…私、何かしましたか?」
「いや、気分が乗らねェだけだ。」
フゥーっと長く煙を吐く。
怒ってる?
ライトに背を向けているから、表情は見えない。
私、何か間違えた?
何かワイパーさんの気持ちを削ぐような
幻滅させるようなことをしてしまったのかも。
「あの…ごめんなさい、私…初めてで…よくわからなくて……」
「いいって言ってんだろ。おれはこのまま寝る。」
言いながらワイパーさんは立ち上がり
部屋のドアを開ける。
「出て行け。」
「……はい。あの、おやすみなさい。」
「あァ。」
そう促されるまま、彼の部屋を出て
隣の自室に入り、自分のベッドへと潜り込んだ。