第二章 〜二人暮らし〜
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ラキとコニスに話を聞いてもらえてよかった。
少し心が軽くなった気がする。
正直あの家に帰るのは気が重いけど
今日は先に寝てるよう言われてるし
明日の朝まで顔を合わせることはない。
そう思うと少しホッとした。
顔を合わさないからホッとするって
こんなことで本当に夫婦になれるのか……
「はぁ……」
昨日から何度目かわからないため息を吐いて
家の前であの鍵を出す。
何かキーホルダーでも付けたいな、と思いながら
鍵穴に挿し、ドアを開けたところで違和感を感じた。
「あれ?」
ランプダイアルが灯り、すでに明るい室内。
そして玄関には
ワイパーさんの大きな靴があった。
今日は遅いって言ってたのにどうして?
慌てて中に入ると、バスルームのドアが急に開き
出てきたワイパーさんとぶつかりそうになった。
「わぁっ!ごめんなさいっ!遅くなっちゃって…」
言いながら顔を上げて言葉が消えていった。
目の前にはお風呂上がりのワイパーさん。
上半身は裸で、それはいつも通りなのだけど
濡れたままの、私よりも長い髪が
いつもより艶っぽく体に張り付いている。
少し火照った赤い顔に
石鹸のいい香りがふわりとして
いつもと違う雰囲気に身体が熱くなり
動けなくなった。
男の人のお風呂上がりなんて
お父さんのしか見たことがなかったけど
この場合はお父さんのとはまるで違う。
なんというか、直視できないほどの
男の人の色気。
そうか。一緒に暮らすってことは
こういうハプニングも起こるんだ。
「急に予定が変わって帰れることになったんだ。お前が謝ることじゃない。」
そんな私を気にする様子もないワイパーさんは
タオルで髪を拭きながらソファーに座った。
私もギュッと一度強く瞬きをして平静を取り戻し
キッチンで手を洗う。
「あの、ご飯は…」
「適当に済ませた。気にするな。」
「ごめんなさい。私、ラキ達と食べてきちゃって……」
「そうか。」
怒ってる?
髪を拭いているタオルで表情が見えない。
先に帰ってることを知らなかったとはいえ
食事もちゃんと作らない
ダメな女だと思われてたらどうしよう…
明日からは
仕事が終わったら真っ直ぐ帰ってこよう。
「あの…何か飲みますか?」
「あァ、じゃあ水をくれ。」
「はい。私もお風呂いただきますね。」
「あァ。」
ソファーの前のローテーブルに水を置いて
逃げるようにバスルームへ向かった。
湯船にお湯が貼ってあったので
ザブンと肩まで浸かる。
熱いお湯の中で頭を抱えた。
怖い顔をやめてほしい。
色々な話をしてほしい。
少しでも私に興味を持ってほしい。
できることなら、笑ってほしい。
ワイパーさんにとって
子孫を残すための結婚なのはわかってる。
でも、せっかく2人でいるのだから
少しでも楽しく過ごしたいと思うのは
私のわがままなのかな?
「……子孫を残すため……」
もしかして……
先に体の関係を持ってしまえば、何か変わる?