第二章 〜二人暮らし〜
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ワイパーさんの家で初めて迎える朝。
卵を焼いて、ハムを切って、パンを焼いて
温かいコーヒーを添えてテーブルに出すと
ちょうどワイパーさんが部屋から出てきた。
「あ、おはようございます。パンでいいですか?」
「あァ。助かる。」
ワイパーさんはテーブルに着いて
一度手を合わせ、食事を始めた。
相変わらずの豪快な食べっぷりに嬉しくなる。
「今日は遅くなる。」
私も向かいに座って食べ始めると
ワイパーさんが不意にそう言った。
「あ、そうなんですか。」
「先に寝てろ。メシもいらない。」
「わかりました。お仕事頑張ってください。」
「あァ。それとこれ、お前のだ。」
そう言ってテーブルに置いたのは鍵。
キーホルダーも何もついていない
本当にただの鍵。
「この部屋のだ。」
私はそれを手に取り、ポケットにしまった。
「失くさないようにします。」
「ん。」
朝の会話はそれだけだった。
なんてそっけなくて事務的な会話。
朝食後、すぐに家を出ようとするワイパーさん。
出勤を見送ろうと玄関先までついて行った。
「行ってらっしゃい。」
新婚夫婦ってこんな感じかな?
と、少し意識して笑顔を向けてみた。
「……あァ。」
ワイパーさんは
ギロリといつものように鋭い視線を残して
ドアの向こうに消えて行った。
「……はぁ……」
また、ため息。
正直、息が詰まりそう。
基本的に顔が怖いから
彼はいつも怒っているように見えてしまう。
「……私も仕事行こ。」
ーーーーーーーー
「ほら、詳しく聞かせなさいよ。コニスも気になるでしょ?」
「うん!すごく気になる!」
夕方。
仕事を終えると、ラキとコニスに捕まり
そのまま3人、パンプキンカフェで
夕食を食べていくことになった。
話題はもちろん、ワイパーさんとのこと。
ラキはすでにコニスにも話していたようで
2人から質問攻めにあい、正直に全てを話した。
神の護衛隊の人の縁談話に乗った父が
私の写真を勝手に送ってしまったこと。
たまたまそれに選ばれて
相手がワイパーさんだったこと。
何度か2人で会い「結婚しろ」と言われたこと。
そして、昨日から一緒に暮らし始めたこと。
「もう、いつの間にそんなことになってんのよ!」
「本当、私も流されるままに…」
「でもワイパーさんなら安心だよ。」
驚きながらも、2人はなんだか楽しそうだった。
「待って。一緒に暮らしてるなら、もう帰った方がいいんじゃない?」
コニスが時間を確認しながら
心配そうにそう言った。
「大丈夫。今日は帰りが遅い日だから、夕食もいらないって言われてる。」
「でもまさかワイパーがあんたを選ぶなんてね〜。」
「私も不思議で仕方ないの。2人でいても楽しそうじゃないし、いつも怒ってるみたいで怖いし…何を話したらいいかわからないし……」
笑顔が消え、だんだんと俯く私を見て
ラキは私の不安を察したようだ。
「……子どもの頃から戦うことしかしてこなかったから、色々と不器用なヤツなのよ。」
「戦うことしか……」
「少しずつでいい。受け入れてやって。なんであんたを選んだのかはわからないけど、選んだからには、あいつなりに大事にするはずだから。」
「大事に……」
——こいつのことはおれが守る。
「うん、それは…わかるけど……」
「まぁまだ正式に夫婦になったわけじゃないんでしょ?お試し期間だと思って、気楽にやりなさいよ。」
「お試し期間か…そっか、そうだね。」