第二章 〜二人暮らし〜
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必要な買い出しを終えて家に着く頃には
すっかり暗くなり、私は急いで夕食の準備をした。
ワイパーさんの家での初めての食事。
ご馳走とまではいかなくても
少しでも手の込んだ料理を作って
見直してもらいたかったけど、そんな時間はなく
簡単にパスタで済ませてしまった。
「あの……お口に合いますか?」
料理は好きだし、得意な方だけど
家族以外の誰かに振る舞うのは初めてだったので
少し緊張した。
「あァ。悪くない。」
「よかったです。」
ワイパーさんが一口食べたのを確認して
私も食事を始めた。
うん、我ながらいい味。
”美味しい”という言葉はもらえなかったけど
レストランに行ったときのような
豪快な食べっぷりで頬張ってくれているので
安心した。
「………」
「………」
それにしても、必要以上の会話がないことに
気まずさを感じる。
今までは、会うのはいつも外だったから
話をしなくても周りの音に誤魔化されていたけど
静かな部屋の中
2人きりでの無言はかなり辛いものだと気付く。
「あの……お仕事は忙しいんですか?」
一生懸命話題を探したけど
なんて当たり障りのない、つまらない問いかけ…と
自分で少し情けなくなった。
「護衛隊のお仕事ってきっと大変ですよね。訓練もあるだろうし。」
フォークにパスタを巻き付けながら
ワイパーさんは少し考えて答えてくれた。
「大変だと思ったことは一度もねェな。」
「そうなんですか?」
「スカイピアも平和になった。何もなくて平和ボケしそうなほどだ。戦う相手もいないし、張り合いもねェ。」
そう言うと、フォークに巻き付けたパスタを
口いっぱいに頬張る。
平和でありがたいことなのに
それをつまらないことのように言うので
私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ。なんかそれ、戦いたくて仕方ないみたいな言い方。」
「………」
ギロリと鋭い視線を向けられてハッとした。
”戦鬼”だなんて呼ばれていた人に
そんな言い方、失礼だったかも。
「ごめんなさい、笑ったりして…」
「いや…気にしてねェ。」
結局それ以上の会話はなかった。
食事の片付けをして、筋トレするという
ワイパーさんより先にお風呂に入らせてもらい
逃げるように部屋に入った。
ベッドに寝転がって考える。
せっかくだから楽しく過ごしたいのに
どうしたら楽しくなるかわからない。
ワイパーさんが私に恋しているとは思えないけど
“結婚しろ“と言われて、もしかしたら
少なからず必要とはされているんじゃないかって
実は少し舞い上がったりもした。
どうしてそんなふうに思えたんだろう。
すっかり忘れてたけど
あの人は子孫を残したいだけなんだ。
ワイパーさんからしたら
子どもができれば、相手は誰でもいいのに。
私は適当に選ばれただけなのに。
必要とされている、なんて勘違いもはなはだしい。
「はぁ……」
ため息が出て、そっと目を閉じると
疲れていたのか
そのまま意識を手放すように眠りについた。