第二章 〜二人暮らし〜
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荷解きを終えて部屋から出ると
ワイパーさんが居間のソファーから立ち上がる。
「メシは作れるか?」
「えっと、一応一通りの家事はできます。」
「食材が何もねェんだ。調理器具もねェし、必要なモン買いに行くぞ。」
「はい!」
ーーーーーーー
相変わらず
煙草を咥えて黙ったままのワイパーさんと
その少し後ろを歩く私。
必要なものを一度に全て揃えられるように、と
ラブリー通りの商店街までやってきた。
と、おもむろにワイパーさんが立ち止まり
「……おい。」
私に振り返った。
「は、はい。」
「前から言いたかったんだが……後ろじゃなくて横を歩け。」
そういって自分の隣の空間を親指で指す。
「えっ……」
「落ち着かねェ。」
「あっ、そうですよね。ごめんなさい。」
ワイパーさんの右隣へ行って、再び歩き出す。
今まで私は、どうしたらいいのかわからなくて
ただついていくだけだったけど
確かに、後ろからついてこられたら
誰でも落ち着かないだろう。
でも、なぜか私は今の方が少しソワソワする。
左を向けない。
左肩が熱い。
それに、隣を歩いているからといって
会話が弾むわけではない。
手が触れてしまいそうな気がして
思わず胸の前で両手を握った。
「あ、ワイパー!久しぶりじゃない!」
と、前方からワイパーさんに気付いた誰かが
声をかけてきて
その声のかけ方に、随分親しい人なのかな、と
顔を上げる。
「あれ!ミドリ!?」
相手はラキだった。
ヤバい、と思った。
まだラキには私たちのことは言っていない。
「なに、2人知り合いだったの?」
「えっと……」
何と説明したらいいか迷っているうちに
ワイパーさんは動じることなくラキに言った。
「こいつを嫁にする。」
先ほどと同じように親指を立てて、私を指す。
「はぁ?ヨメ??」
ラキは眉間に皺を寄せて口を開けた。
驚くのも無理はない。
本当にこの人は…
説明下手というか、言葉足らずというか……
「えっとね……」
言葉を選びながら事情を説明しようとするけど
ワイパーさんは構わず歩き出してしまった。
「おい、行くぞ。またなラキ。」
すでに背中を向けながら、ラキに向かって
軽く手を上げる彼を、仕方なく追いかける。
「ごめん、ラキ!今度詳しく説明する!」
「意味わかんないわ……」
混乱しているラキを残して
再びワイパーさんの隣を歩いた。