第二章 〜二人暮らし〜
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あの日、交わした言葉。
——おれと、結婚しろ。
——はい……結婚…します……
あの後、いつも通り会話もなく送ってくれて
家の前でワイパーさんと別れた。
今でも、胸がドキドキしてる。
本当に、私はあの人と結婚してしまうのか、と
自分の身に起こっていることが
夢なのか現実なのか時々わからなくなるほど
ふわふわしたような毎日を過ごしていた。
それから数日が経って
仕事を終えてカフェを出ると
突然現れたワイパーさんから告げられた言葉。
「とりあえず、一緒に暮らすぞ。」
「……え?」
「明日の朝、迎えに行く。準備しておけ。」
それがつい昨日の出来事。
そして私は今、荷造りをしている。
「一体どういうことなの?ミドリ。正式にお付き合いすることになったの?」
荷造りを手伝ってくれている母は
急に「ワイパーさんと一緒に暮らす」と
言い始めた私に、すごく戸惑っている。
それも仕方ない。
唐突に話が進みすぎて
まだ両親にも説明をできていなかったから。
だって、この縁談は断るつもりだったのに
いきなり結婚も決まった上に
明日から一緒に住み始めるなんて…
でも、ありのままを話すしかない。
「実は……結婚することになったの。」
「………」
「………」
お母さんの手が止まり
目玉が飛び出そうなほど目を見開いて
あんぐりと口を開けた。
そばで聞いていたお父さんも
持っていた本を床に落とした。
「そうなの!?あらあらいつの間に!!」
「プロポーズされたってことか!!」
「プロポーズ……?」
プロポーズ…だったのかな?
——おれと、結婚しろ。
プロポーズというよりも…ただの命令のような……
「彼はミドリのことを気に入ってくれたんだな。」
その父の言葉にドキッとする。
そういうわけではないと思う、と言おうとしたら
母が嬉しそうに顔の前で手を合わせた。
「きっとそうよ。でなきゃプロポーズなんてしないでしょ?」
「神の護衛隊の妻か…ミドリの人生も安泰だな。」
相変わらず能天気な両親にため息を吐いて
最後の服をかばんに押し込んだ。
結局お父さんは縁談を断ってはくれなかったし
お母さんも自分を心配する素振りは見せながら
私がワイパーさんに気に入られることを
密かに期待していたに違いない。
でも一番意外なのは自分自身の行動。
なぜ「結婚する」と答えてしまったのか。
あの時
私が結婚をやめにしたがってると見抜かれて
ワイパーさんは今までに見たことのないような
傷付いてるような、少し寂しそうな
そんな表情をした。
何度か会った数日間。
飛んでくるコナッシュから守ってくれたり
食べきれなかった料理を食べてくれたり
帰りは必ず家の前まで送ってくれた。
ただ怖いだけだったあの人の違う一面を見て
もう少しこの人のことを知りたいと、そう思った。
「……でも結婚は…少し早まった行動だったかな……」
この日から、私の不安だらけの毎日が始まる。