神、愛を知る。/エネル
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「ゴッドだ!!」
「まさか本当に!?ミドリちゃんが呼んだのか!!」
「逃げろー!!」
彼の姿を見るなり
周りの皆は遠くへ逃げ、そこには私とゴッドだけ。
まだどこかで消しきれていない火事の炎が
彼の顔をユラユラとほのかに照らし
薄暗い中でも微かに表情が見て取れる。
彼は無表情で私を見つめていて
私は深く頭を下げた。
「……ありがとうございました。助けてくれて。」
「あァ、問題ない。」
「…あの人たちは……死んでしまったんですか?」
「ミドリを悲しませた。当然の報いだ。」
ゴッドは目の前で片膝を着き
体をかがめて長い手を伸ばし、私の頬に触れる。
「お前が泣いているとわかって、怒りでどうにかなりそうだった。」
久しぶりのその手の温もりは
やっぱりとても優しくて
私はそっと自分の手を重ねた。
「……私、あなたに酷いことを言ってしまったのに……」
と、その手を握り返される。
「おれはお前が欲しい。」
大きな手で、私の手を引き寄せ
私もそれに合わせて立ち上がると
真っ直ぐに見つめられる。
「あの日、目が合った時からだ。お前が欲しかった。」
ドクドクと心臓がうるさくなり
目を逸らすことができない。
——もう来ないでください!!
——本当に迷惑なんです!!
あんな風に傷付けてしまったのに
この人はまだ、私のことを想ってくれていた。
「このひと月、ずっとミドリのことを考えていた。そばにいたい。触れてみたい。手を握って、この腕に抱いてみたい、と。」
「………。」
「何でも思いのままにしてきた。だが、お前だけはそうならない。どうしたら、おれのものになる。」
私も
傷付けたままにしてしまったこの人のことを
ずっと、考えていた。
「誰かのことをここまで考えるのは初めてのことだ。」
あの時のように
少し寂しげな表情になる彼を見て
胸がぎゅっと締め付けられ
堪えきれないほどの愛おしさが溢れてくる。
一番遠く、恐ろしい存在だったはずなのに
いつの間にか私は、この人のことを……
「……エネル様、それは愛です。」
「……愛?」
「そばにいてほしいなら、好きだ、愛してる、そばにいてくれって、お願いするんです。命令じゃなくて、お願いを。」
「……私はミドリを愛してるのか。なるほど、しっくりくる。」
握られていた手をさらに強く引かれ
私は彼の腕の中にすっぽりとおさまった。
「愛している。そばにいてほしい。ミドリ。」
あの優しい温もりに全身を包まれて
与えられた安心感に再び涙腺が緩む。
大きな体に手を回して、その胸に顔を押し付けた。
「はい、そばにいます。エネル様。」
優しい瞳でこちらを見て、彼が微笑んだ。
この人のこんな笑顔を見たのは初めてだ。
ドキドキと胸が高鳴る。
手を伸ばして、エネル様の両頬を引き寄せて
そっと口付けをした。
神様になんてことをしているんだろう、と
心の片隅で思ったけど
キスをせずにはいられなかった。
エネル様は少し驚いた表情をしていたけど
それはすぐに笑顔に変わり
もう一度顔を近づけてきた。
「愛とは、なかなかいいものだな。」
私もまた目を閉じて
さらに深く口付けを交わす。
甘く優しいエネル様からのキスに
身を任せていると
腰に腕が回されて、ふわりと身体が浮いた。
軽々と私を抱き上げて
そのままゆっくりと歩き出す。
「帰ろう。私たちの社へ。」
あのときの神様の気まぐれな行動が
私の人生を変えた。
こんな未来、誰が予想しただろうか。
まさか神様が恋人になるなんて。
…fin