神、愛を知る。/エネル
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「青海人が!?」
「あァ、スカイピアにやってきてるらしい。」
「珍しいな。この町まで来なきゃいいがな。」
『カイゾク』という青海の無法者たちが
この国に来て所々で悪さをしている。
ゴッドが私の前に現れなくなって
ひと月が経とうという頃、町にそんな噂が流れた。
「ミドリちゃん聞いた?昨日は隣町に現れたみたいよ。青海のカイゾク!」
「カイゾクって、そんな悪い人たちなんですか?」
常連のお客さんともその話題になった。
カフェはゴッドが現れなくなり
これまでのように客足が戻っていた。
「私もよく知らないけど、青海じゃ犯罪者だからねぇ。まぁあまり派手にやるようなら、ホワイトベレーや神隊が黙ってないよ。」
「そっか。そうですよね。」
青海人。カイゾク。
私にはあまり関係ない、どこか遠い存在に感じて
特に気にはしていなかった。
——が、
「キャー!!」
「逃げろー!!」
眠りについていた深夜。
外の騒がしさに目が覚め、部屋を飛び出す。
「何かあったんですか!?」
通りがかりの人の腕を掴んでそう聞くと
その人も焦った様子で教えてくれた。
「青海人が暴れてる!見たこともない兵器で爆発を起こして、商店街は火の海だ!!」
「商店街が!?」
「待て!近付かない方がいい!!」
その人が制するのも聞かず、私はお店へ走った。
反対方向から逃げてくる大勢の人たちの間を
すり抜けながら祈る。
どうか、カフェが無事でありますように。
「ウォーターダイヤルを!もっと大きいものはないのか!!」
「クソ!青海人め!!」
「ホワイトベレーはまだか!!神隊は!?」
商店街ではすでに消化活動が始まっていて
私は自分の店へと急いだ。
「ミドリちゃん!それ以上奥には行かない方がいい!まだ青海人がいる!」
「でもカフェがっ……」
「いや…君の店は、もう……」
「えっ………」
同じ商店街に軒を連ねるお店のおじさんが
苦しそうな表情を私に見せて
もう、手遅れであることを悟った。
「…でも……私、行かなきゃっ!」
「ミドリちゃん!!」
お父さんとお母さんが、私に残してくれたお店。
2人の思い出が詰まった唯一の場所。
燃やされてしまっていたとしても
その最後を見届けたい。
それにカケラでも、何でも
ほんの少しでも残っていれば……
「…………」
炎はもうほとんど消えていて
残されていたのは地面に散らばる瓦礫だけ、
お店があったかどうかなんて
わからないほどに
そこにはもう、何もなかった。
「っ……うぅ……」
全身の力が抜けてその場にうずくまる。
同時に涙が流れた。
「お父さんっ…お母さんっ……」
カケラでも、なんて甘かった。
炎が全て、焼き尽くしてしまった。