神、愛を知る。/エネル
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「私の嫁になれば、ここの100倍広い部屋を与えてやるぞ。」
お嫁さんなんて、まだそんなこと……
家に帰してくれたから
もうその話はなくなったものだと思っていた。
「あの…どうしても、わからないんです……神様であられるエネル様が…その……なぜ私なんかを気に入っていただけたのか……」
自分で言っていて恥ずかしくなる。
「さァな、私にもわからない。」
言葉につまる私をよそに
ゴッドは再び、ヤハハハ、と楽しそうに笑った。
「あの後、また嫁の候補を探したんだが、気にいる娘は見つからない。」
この国には私より綺麗な人なんてたくさんいるし
何より、あの神の社にいた側近の女性たちは
皆スタイルもよく美しかった。
あんな美女に囲まれて生活しているのに
本当に、どうして私なのだろう……
「ミドリ。」
「はい。」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げると
そこにはゴッドのいつになく真剣な顔。
「私はお前がいいんだ。」
「なっ……」
真っ直ぐに見つめられて、目を逸らせない。
再び全身が熱くなる。
この人の気まぐれでありながらも
次々と落とされる爆弾発言に
私の心臓は持ちそうにない。
男の人に口説かれた経験もない私は
どう対処していいやら混乱するばかりで
目を逸らして
視線から逃げることしかできなかった。
「だから、からかうのはやめてください。」
気を紛らわそうとシンクで食器を洗い始める。
まともに向き合って話していては
どんどん彼のペースに巻き込まれてしまうから。
「もう、私のことは怖くないようだな。」
ふいに立ち上がったゴッドがそう言いながら
いつの間にか飲み終えたコーヒーのカップを
シンクの横に置いた。
「え?」
「よく話すようになった。」
自分の記憶を探る。
確かに、神の社にいた頃は
彼のことが怖くて怖くて
まともに顔を見ることもできなかったし
会話も、彼の話にただ相打ちを打つ程度だった。
恐怖心が完全に消えたわけではない。
でも、あの日——
——どうしたらお前は喜ぶ。何が不満だ。
あの寂しそうな表情と
——何でもいい。望みを言え。叶えてやる。
あの意外なほどに暖かく優しい掌が
どうしても忘れられなくて
根っからの悪い人に思えなくて
いつの間にか心を許し始めているのかも。
「また来る。」
ゴッドは最後にその大きな手で私の頭を撫でて
満足気にカフェを後にした。
頭に残った感触は
やっぱり、すごく優しかった。