神、愛を知る。/エネル
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カフェのそばに借りている
小さなアパートの一室。
ランプダイヤルを点けると
小さなテーブルに狭いベッドが明るく照らされた。
一番安心できる居場所は
何ら変わりなく、私を出迎えてくれた。
「はぁ……」
ベッドに横たわると安堵のため息が出た。
まさかとは思ったけど
本当に、帰らせてくれるなんて。
神の社にいたのは3日間。
私にとってはとても長く
拷問のような3日間だった。
あの悪夢は終わった。
まだまだゴット・エネルの支配下にいることに
変わりはないけど
自分の家にいられるだけで心が安らいだ。
ただ、ひとつ頭に残っていることがある。
——どうしたらお前は喜ぶ。何が不満だ。
あの時の、ゴッドの寂しそうな表情が
目に焼き付いて離れない。
相手はこの島の誰もが恐れる神様。
全てを力でねじ伏せる自分勝手な最低野郎、と
勝手に思いこんでいたけど
こうして約束通り家に帰してもくれた。
もしかしたらそこまで悪い人では
ないのかもしれない……
恐怖に怯えた私は
彼のことをよく知ろうともしないで
ただ家に帰ることだけを考えてた。
もしかしたら
傷付けてしまったかもしれない……
そこまで考えて頭をブンブンと振る。
気にしてもしょうがない。
きっともう二度と会うことはないだろう。
私はまた今まで通り、彼の怒りに触れないよう
ここで暮らしていくだけだ。
ーーーーーーー
「もう会うことはないと思ったんですけど!」
今まで通りの平穏な生活、なんてものは
数日でまた崩れ去ってしまった。
「なぜだ?そんな約束をした覚えはない。」
私のカフェに突然現れたゴッド。
驚いたお客さんたちは
ひとり残らず逃げるようにお店から出てしまった。
それを気にすることなく
彼はカウンター席へと腰掛ける。
今回は従者を連れている様子はなく
ひとりで来たようだ。
「安心しろ。以前のように急に連れて行ったりはしない。お前はそれが嫌だったんだろう。」
体の大きなゴッドには
お店のカウンターは少し小さいのか
背中を折り曲げてテーブルに頬杖をつき
真正面に立つ私を楽しそうに見つめる。
「あの…では、今日は何をされに?」
その視線に居心地が悪くなり
コーヒーでも淹れようと彼に背を向けた。
「顔を見たくなったんだ。」
「なっ!」
あやうくカップを落としそうになった。
「え、だ、誰のです?」
「お前だミドリ。他に誰がいる。」
ヤハハハ、と楽しそうに笑ったかと思えば
メニューを手に取り、それを眺め始めた。
突然そんな爆弾発言をされて
私は沸騰しそうなほどに顔が熱くなる。
それを悟られないよう、彼の目の前に
コーヒーの入ったカップを差し出した。
「か、からかわないでください。」
焦る私をよそに
ゴッドはひととおりカフェの中を見回しながら
コーヒーを口に含む。
「ちっぽけな店だな。どうして私の社よりここがいいのか、さっぱりわからない。」
神様のそばになんて
いられるわけないじゃない……と
つい小さな声で突っ込んでしまった。
「聞こえているぞ。」
「すみません……」