神、愛を知る。/エネル
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「退屈だな。」
「平和で良いことです。」
「平和か…バカになりそうだ。そして少し飽きてきた。」
「そのように申されましても……」
「……うむ……そうだなァ……嫁でも取るか。」
「……は?」
「私の嫁だ。愛らしい娘がいいな。誰かいないか。」
「急に何をおっしゃいます。」
「暇つぶしにはなるだろう。」
「あのっ、ゴッド!どちらへ?」
「散歩だ。ついでに嫁を探す。お前も来るか?」
「え…あ、はい。では。」
このときの神様の気まぐれな行動が
私の人生を変える。
〜神、愛を知る。〜
「ゴッド・エネルが!?何をしに!?」
「わからないけど、色々な町に現れては歩き回っているらしいわ。」
「わざわざ来なくても、私たちがゴッドに逆らえば、能力でわかるんでしょ?」
「ただ散歩してるだけだと言う人もいるけど、町にまで来られたら余計に落ち着かな——」
「しっ!それ以上は言わない方がいいわ。」
お客さん達のそんな会話を耳にした。
あのゴッド・エネルが神の社を抜け出して
私たちの住む町に現れてる?
冗談じゃない。
ただでさえあの不思議な力に怯えながら
神の怒りに触れないよう
静かな暮らしを虐げられているというのに
本人が近くに現れたりなんてしたら
ゆっくり夜も眠れない。
とにかく、今日は早めにお店を閉めよう。
——空島・スカイピアのエンジェル島。
島唯一の繁華街、ラブリー通りから
少し横に逸れた小さな商店街。
私はここで
亡き両親が残してくれた小さなカフェを
ひっそりと営んで生活している。
ここ数年
ゴッド・エネルがこの国の神となってから
生きた心地がしないような毎日に
心底うんざりしていた。
午後3時。
いつもは夜までお店を開けているけど
ゴッドが彷徨いているという噂を恐れてか
商店街を歩く人通りもほとんどなかったので
お店を閉める準備を始める。
「はぁ…」
いつもなら午後のひとときを過ごすお客さんや
買い物の休憩に立ち寄るお客さんで
店内は賑わっている時間なのに。
ひとつため息を吐きながら
店前の看板をしまうため、外に出たときだった。
「なかなか、いないものだな。」
「そうですね。あなた様のお気に召される娘など、そう簡単には…」
話し声がした方へ振り向いて、すぐに後悔した。
その存在を恐れてはいても
間近で見たことはなかったのに
そのオーラのせいか、常人とは違う存在感に
歩いてくるその人が、ゴッドだとすぐにわかった。
ぱちっと目が合ってしまい、思考が停止する。
すぐにでもお店の中に逃げたい。
でも、失礼な態度をとって
彼の機嫌を損ねてしまうかも。
お辞儀くらいはしておくべきだろうか。
一応ぺこりと頭を下げると
ゴッドは私を見つめたまま近付いてきて
目の前に立ち、うん、とひとつ頷いた。
「よし、決めた。」
「は?」
「へ?」
ゴッドの一言に
従者らしき男の人が驚いた声を出し
ほぼ同時に私もまぬけな声を出した。
彼はそんなことは気にもしない様子で
顎を指でさすりながら
尚も私の顔をまじまじと見つめ、ニヤリと笑い
「この娘にする。」
そう言って、私の手を掴んだ。
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