あなたがくれたもの/アーロン
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夏のような熱い日差しが続いて
ミドリの洗濯も捗り、今日は大物を、と
皆のシーツを集めて干しているところだった。
「ミドリ、ここだったか。」
やってきたのは、はっちゃんだった。
「ハチさん、今日もいい天気ですね!」
「航海士が言ってた。気候が安定してきてるだろ?予定だと明日あたり島に着くってよ。」
「えっ、明日?」
「まァ、そこに人がいるかどうかはわからねェが、降りられるようにお前、準備しておけよ。」
「は、はい……」
寂しくなるけどな〜
まァよかったよな〜、と言いながら
はっちゃんは去っていった。
「…明日……」
覚悟はしているつもりだったが
それはミドリにとってあまりにも突然だった。
洗濯を干し終えるなり、船内を走った。
アーロンを探すためだ。
「よォ、ミドリ。」
会ったのはタイガーだった。
「明日島に着くそうだ。どんな所かはわからないが、とりあえず今夜、お前のために宴を開くことになったぞ。」
「宴を?」
「短い間だったが、一緒に過ごした仲だからな。」
「そんな…わざわざありがとうございます。お頭さん。」
「まァアーロンのヤツはそんな必要ねェって拗ねてたが、気にするな。」
ハッハッハッといつものように笑いながら
ミドリの頭をクシャクシャと撫でる。
「あの、アーロンさんは?」
「あァ、後甲板で昼寝してたな。」
「ありがとうございます。」
言われるままに後甲板へ向かう。
必死だった。
もう二度と
会えなくなるかも知れないと思ったら
居ても立っても居られなくて
少しでもそばにいたくて
後甲板への扉を開ける頃には
瞳に涙が溢れていた。
——ガチャ
「アーロンさんっ!」
壁にもたれかかるように座っていたアーロンに
ミドリが勢いのままに抱き着く。
それにはさすがのアーロンも少し驚いたが
小さな身体を簡単に受け止めた。
「なんだ急に、てめェは!」
「………」
引き剥がすのは簡単だが
あまりにも必死に、ミドリなりに全力で
胸に抱き着いてくるから
アーロンも諦めたように受け入れ
ミドリの頭に手を置いた。
「……聞いたんだな。」
「……はい。明日…お別れだって……」
「喜ぶところだろ。そこに人間が居りゃ、お前はもう自由だ。」
「でも……」
なんだか煮え切らないミドリの返答に
アーロンは怪訝そうな顔をした。
「何が不満だ。」
「……アーロンさんと…離れたくないんです……」
「………」
「わがままでごめんなさい……」
アーロンはミドリの肩に手を置くと
自分から引き剥がし、目の前に座らせ
ギロリと鋭い目つきで顔を見つめる。
「ミドリてめェ、それは海軍になるのを諦めるってことか?」
「…えっ……」
「おれが何のためにお前を連れ出したと思ってる。」
「………」
「失望させるな。」
ちゃんと叶えると、決意したはずだったのに
目を背けていた
わたしの夢……
「……アーロンさん、私——」
「敵襲ー!敵襲ー!!」
「軍艦だー!!野郎ども、集まれー!!」
ミドリの言葉を遮るように
見張りをしていたクルー達の声が
船内に響き渡った。
「……ミドリ、どうやら別れは明日じゃなさそうだぞ。」
「えっ……」