あなたがくれたもの/アーロン
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穏やかに船が揺れ続けている。
航海は順調なようだ。
ぎゅるるるる……と間の抜けた音が倉庫内に響き
ミドリは昨日から
何も口にしていないことに気が付いた。
アーロンさんはここにいろと言ったけど
何か食べ物をもらえるのだろうか。
いや、連れ出してもらって
そこまではおこがましいのかも…
でも、いつまでこの船に乗せてもらえるか
わからないのに
このままこの何もない倉庫にいたら
餓死してしまう。
「少しくらいなら平気かな……」
誰か通り過ぎたら
何かもらえないか聞いてみよう。
そう思って静かに倉庫のドアを開け
辺りを見回す。
人が通る気配が全くなかったので
仕方なくミドリはドアの外に出た。
「あの〜……」
恐る恐る出した小さな声は虚しく空気に消えた。
「どなたか、いらっしゃいませんか〜?アーロンさ〜ん……」
心細さを感じながらも空腹に耐えかねて
食べ物を求めて船内を歩き始める。
「お、アーロンの友達だな。」
ふいに後ろから声をかけられて振り返ると
そこにはすっかり顔馴染みの
フィッシャー・タイガーが立っていた。
「船長さん。ごめんなさいっ!アーロンさんには倉庫を出ないように言われてたんですけど……」
「あァ大丈夫だ。どうした?」
「あの……お腹が空いてしまって……」
「腹が?ハッハッハッハッ!」
「すみません……」
「来い。食わしてやる。」
タイガーに言われるままに着いていくと
広いダイニングにやってきた。
朝食の時間はとうに過ぎ、昼食にはまだ早いため
ダイニングに人はおらず
キッチンにひとり、昼食の支度をしている
クルーの姿があるだけだった。
「お頭!その人間が例の!?」
「あァ、アーロンの連れだ。心配するな。害はない。」
タイガーの横でミドリはペコリと頭を下げる。
「何か食うものはあるか?」
「えっ、えっと…朝メシの残りのパンとスープが少し……」
「出してやってくれ。」
「へェ。」
「座れ。ミドリ、って言ったか。」
「あ、は、はい。」
ミドリは言われるまま
タイガーの隣の席へと腰掛けた。
「あの、いいんですか?こんなところで食事なんて…私あそこを出ないようにと言われてて……」
「気にするな。」
にっと歯を見せて笑うタイガーに
ミドリは安心して笑顔になり、パンをかじる。
温かいスープは身体に染みて
意外なほどに美味しいものだった。
——と、
ドスドスと大きな足音が近付いて来たかと思うと
勢いよくダイニングの扉が開く。
入ってきたのはアーロンだった。
ミドリを視界に捉えるなり、眉間に皺を寄せ
不機嫌な表情のまま彼女に近付く。
「ここで何してる!なぜちゃんと部屋にいね
ェ!」
言いながらアーロンはミドリの目の前の席に
大きく足を組んで座った。
後ろにははっちゃんの姿もあり
どうやら2人でミドリを探していたようだ。
「すみません…お腹が空いちゃって……」
やっぱり、怒られてしまった。
ミドリは申し訳なさそうに
手に持っていたパンを皿の上に戻した。
「勝手に部屋を出るなと言ったはずだが。」
「ごめんなさい…」
「いいじゃねェか。満足にメシも与えてやらないお前も悪い。」
横から助け舟を出してくれたタイガーによって
アーロンは罰が悪そうに頭を掻き
チッとひとつ舌打ちをした。
「お前に仕事がある。それを食ったらハチと行け。」
「わかりました。結局、食べさせてくれるなんて、アーロンさんて優しいですよね。」
「うるせェ!海に投げ飛ばすぞ!」
「だから、それは嫌です。」
「ハッハッハッハッ!!いいなァ、お前ら!!」
「笑いすぎだぜ、お頭。」