第一章 〜遠い空の下で〜
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酒場が開店してから
がむしゃらに仕事をする毎日が始まった。
朝、養護施設へ出勤して子ども達と過ごし
酒場での仕事の日は、夕方には施設を出る。
酒場では調理は主に店長の仕事で
私はお酒作りや接客、皿洗いなど
雑用をこなしながら日付が変わる時間まで働く。
忙しくも、充実した毎日だった。
夜まで仕事をした日は
家に帰る頃にはヘトヘトで
ベッドに倒れ込むなり意識を手放すように眠る。
この日も、シャワーを浴びて
ベッドへ倒れ込んだ瞬間だった。
——コツコツ
窓の外で音が聞こえ
重たい体を無理やり起こし、窓の方へ向かうと
あの伝書鳩がとまっていた。
チャンからだとすぐにわかって
疲れもどこかに吹き飛んだように体が軽くなった。
「ずっと待っててくれたの。いい子ね。」
窓を開け、いつものように封筒を受け取る。
封を切ると、やはりいつものように
札束が現れた。
「も〜。お金はもういらないって言ったのに……」
このお金には絶対に手を出すものか。
そう決意して
机の引き出しの一番奥へそれを入れた。
そして、同封されていた手紙を出す。
開くのに少し緊張した。
前回の手紙に
「あなたに会いたい」なんて書いてしまい
その返事を見るのが怖かったから。
『ミドリ、エターナルポースをありがとな。
今はとても遠くにいて
ミドリの島には行けそうにない。
でも、いつかまた行きたいとは思ってる。
その時は笑顔でお前に会いに行くよ。』
これは…
チャンも私に会いたいと思ってくれてるのか
それとも、実際会う気はないけど私に気を使って
いつか、と言ってくれてるのか。
チャンの気持ちがわからなくて
モヤモヤが心に残った。
手紙って、時々すごくもどかしくなる。
こうして大切に思われているだけで
感謝しなくちゃいけないのに
私はどうしても、チャンを求めてしまう。
お金なんかいらないの。
あなたに会いたいの。
この気持ちは、迷惑なんだろうか。
遠い空の下にいる、私の大切な人。
あなたは、どんな人ですか?