最終章 〜ともに歩き出す〜
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17年前のあの日——
3歳の頃に目の前で起きたあの光景が浮かぶ。
家の一室で父が母を刺した。
涙を流したぐちゃぐちゃの顔で
謝りながら、何度も何度も。
そして、その矛先は私にも向けられた。
倒れていた母が起き上がり、父を跳ね除けて
私を抱えて家から飛び出す。
胸も、首も、腕も、母は血だらけだった。
すごく怖かった。
怖くて怖くて
二度と思い出したくないほどの恐怖。
無意識のうちに記憶の奥底へと
仕舞い込んでしまっていた。
涙を流しながら全身が震えて、そんな私を
みるみる力が弱くなっていく母の腕は
ずっと抱き抱えてくれていた。
——誰か!助けて!!誰かぁ……!!
道端で動けなくなった母が必死に叫ぶと
ひとりの男の人が現れる。
——この子をっ…どうか、お願いしますっ…
——子どもよりあんたの方が重症だ。今医者を呼ぶ。
シャンクスだ。
私をシャンクスに託すと
使命を終えたかのように、母は動かなくなる。
声が枯れるほどに、泣き叫んだ。
私の髪を、大きくて暖かい手が
優しく撫で続けてくれていた。
——怖い思いしたな。
自分の指で、何度も何度も私の涙を拭ってくれた。
——悪いな。お前の母さんは助けられなかった。
耳元で低く響く声はとても穏やかで優しくて
おかげで私は安心することができた。
——でも、おれがついてる。安心しろ。
暖かい腕の中から顔を上げると
そこには優しい笑顔のシャンクス。
私は、この笑顔に救われた——
「全部、思い出したよ。シャンクスが私を救ってくれた。」
「黙っていて悪かった。お前からエターナルポースが届いたとき、決めたんだ。立派になって元気にやってる姿を一目見たらここを離れて、手紙のやりとりも終わりにするつもりだった……でも、できなかった。」
シャンクスは一度身体を離すと
腰をかがめて、私と目線を合わせる。
真っ直ぐに視線と視線が交わった。
「辛いことがあったことも、孤独を感じてたことも、手紙を通して全部知ってる。それでもお前が健気に頑張ってる姿を見たら、離れがたくなっちまった。」
また、涙が出そうだ。
「二度とお前を、失いたくない。」
「……私も、シャンクスといたい。」
素直にそう言えば
シャンクスの大きな手が頬に添えられた。
ゆっくりと顔が近付いてくる。
そっと目を閉じて
唇と唇が重なった。