最終章 〜ともに歩き出す〜
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すぐに叔母さんの家を出ると
外はすっかり暗くなり、街灯が灯っていた。
もう船は出てしまっただろうか。
走り出そうとした瞬間——
——バサバサッ
「あ!」
目の前にあの鳩が降り立った。
「チャン……シャンクスからね。」
鳩が身につけていた手紙を灯りの下で開くと
そこにはいつも通りの
見慣れたチャンの文字が並んでいた。
『ミドリ。
今まで正体を明かさず、騙していて悪かった。
ミドリを傷付けたくなかった。
というのはただの口実で
おれはお前にとって、いつまでも
格好良いチャンのままでいたかったんだと思う。
自分を偽るのは、もうやめる。
おれは海賊で、犯罪者だ。
でも、お前をいつも大事に想ってきた
その気持ちは決して嘘じゃない。
ミドリ、おれ達は明日の朝、船を出す。
一緒に来てくれ。連れて行きたい。
おれはお前を愛してるから。
シャンクス』
「ううっ…シャンクス……」
手紙を抱き締めて、涙を流した。
チャンが、シャンクスが
初めて自分の気持ちをさらけ出してくれた。
——おれはお前を愛してるから
最後の文章が頭から離れない。
こんな形の告白に、全身が熱い。
会いたい。早く。彼に。
家に帰ると、壊されていたドアノブが
元通りに直されていた。
シャンクスのところの船大工さんが
直してくれたんだろう。
朝を迎える前に荷物をまとめる。
いつか海へ出たい、と漠然と考えていたけど
まさかこの私が海賊になるなんて。
陽が登りきるのを待ちきれなかった私は
夜明けとともに、港へ向かった。
薄暗い海を背景に
船の前にはひとり、佇む姿があった。
「……ミドリ。」
「シャンクス!」
荷物を放り出して、私から抱き着いた。
シャンクスも、片腕で力強く抱き留めてくれた。
「……17年前も、こうしてお前を胸に抱いた。」
腕の中からシャンクスを見上げると
優しい瞳で笑いかけ、髪を撫でてくれる。
「立派になったな。」
私を優しく見下ろすその表情が
夢に見ていたあの場面と重なる。
夢で私を抱き止めてくれたあの人は
いつも表情がわからなかったけど
あれはシャンクスだったんだ。
どうして今まで思い出せなかったのか
不思議なくらい
全部、全部鮮明に蘇る。