最終章 〜ともに歩き出す〜
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どうして内緒にしてた?
おれはチャンだよって
お前に会いに来たんだって
そう言ってくれたら、私は心から歓迎したのに。
シャンクスの船を飛び出して
隣町の叔母さんの所へ向かった。
陽は暮れかけて
辺りは薄暗くなってきている。
叔母さんは、チャンに会ったことがあるはず。
17年前とはいえ、彼の正体は知っていたはずだ。
2人して、私に内緒にしていた。
私だけが、何も教えてもらえなかった。
「叔母さん、知ってたの?」
血相を変え、いきなりやってきた私を見て
何かを察した叔母さんは
とりあえず中に入りなさい、と
テーブルにお茶を出してくれた。
私はそのお茶に手をつけることなく、話を続ける。
「おばさん、チャンに会ったことあるんでしょ?シャンクスが…彼がチャンだって知ってたんでしょ?」
興奮する私とは正反対に
叔母さんは落ち着いてお茶を一口口に含んだ。
「……その人が名乗ったの?自分がチャンだって。」
叔母さんの問いに、私は首を横に振り
正直に話した。
「シャンクスの部屋を見たの。いつも手紙を届けてくれる鳩がいたし…私が送ったエターナルポースもあった……」
「そっか……ごめんなさい、ミドリ。」
そう言って頭を下げる叔母さんを前に
あぁ、やっぱり全部知ってたんだ、とわかって
唇を噛み締める。
「私が彼に正体を明かさないようにお願いしたのよ。」
「叔母さんが?」
それから叔母さんは全てを話してくれた。
17年前の当時、ろくに家に帰らず
遊び歩いていた叔母さんは
私のお母さんが亡くなったのを
2週間も過ぎてから知った。
当時3歳だった私が両親を亡くし
身寄りがなくなったことを知っておきながら
すぐには迎えに行かなかった。
いい加減な暮らしをしている自分が
幼い子どもを育てる自信を持てなかったらしい。
それからまた半月が過ぎて、様子を見に行くと
私は島に来ていた旅人たちと
楽しそうに過ごしていたそうだ。
それがシャンクス達。
叔母さんは彼らが海賊であることを知り
このままでは私が連れていかれてしまう、と
自ら名乗り出て、私を譲り受けた
ということだった。
「チャンさんには感謝してるの。あなたが寂しい思いをしないでいられたのも彼らのおかげだし、島を離れた後も十分すぎるほどの援助をしてくれた。」
そう話す叔母さんの表情からは
申し訳なさと、後悔の念が感じられる。
「でも、相手は海賊。犯罪者よ。いくらいい人だとしても、犯罪者から助けられて生きてきたと知ったら、ミドリ、あなたが傷付くと思った。だから、彼らがまたこの島に来たと聞いて、直接口止めに行ったのよ。」
「……そうだったんだ。」
「でもこんなふうにあなたを追い詰めてしまうなんて、間違ってたのね。」
叔母さんはもう一度「ごめんね」と謝って
私の手を両手で優しく包み
真っ直ぐに目を見て言った。
「彼がチャンよ。17年前、あなたを救ってくれた人。それからずっと、私たちを影から支えてくれていた人よ。」
私に内緒にしていたのは
私を傷付けないためだった。
叔母さんも、シャンクスも。
私だけが除け者にされていたわけではなくて
私だけが大事にされていた。
全てを理解して、ツーっと涙が頬を伝う。
「私、シャンクスに会いたい……」
「ええ。行きなさい。」
まだ、間に合うだろうか。