第六章 〜真実を知るとき〜
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勢いよくドアを開けて身体が固まった。
部屋中が荒れている。
タンスや棚の全ての引き出しが開き
乱雑に中身が床に投げ捨てられていた。
「……空き巣?」
ガクガクと身体が震える。
こういうとき、どうしたらいいの?
恐怖と絶望を感じて動けずにいると
ふと、嫌な予感がした。
「……もしかしてっ!」
靴を脱ぎ捨てて、部屋の一番奥へ走る。
悲しいことに予想は当たっていた。
机の一番上の引き出しが、開いていた。
「ないっ…ない!!」
チャンからのお金と、貯めていたお給料が
引き出しからごっそりとなくなっていた。
「どうして……」
全身の力が抜けて、崩れるように椅子に座る。
同時に嗚咽が漏れて、涙が出てきた。
悔しい。悲しい。
誰がこんなことしたの?
私が何をしたっていうの……
辛いことを乗り越えて
今日から気持ちを新たに頑張ろうと思った矢先の
この出来事に打ちひしがれる。
コツコツ——
窓の外に、あの鳩がいた。
私が返事を持たせないものだから
ずっと部屋のそばで待ってくれている。
「チャン……」
さらに目頭が熱くなって涙が止まらない。
震える手で、ペンを握った。
机の上には
白紙の便箋が昨日のままになっていた。
『チャン たすけて
どろぼうが入ったの
お金を全部とられちゃった
お願い たすけて』
ギリギリ読めるくらいの、震えた文字。
必死に鳩に取り付けて、飛ばした。
わかってる。
こんなことをしても、彼は来られない。
遠い海の向こうでこれを受け取っても
彼はきっと、助けに来られない自分を
責めてしまうだろう。
でも、今の私には
他にすがれるものが何もない。
チャンの他に……
「………っ…シャンクスぅ……」
思い浮かべてはいけない人だった。
その名前だけは、呼んではいけないと
頭ではわかっていたのに
一度名前を口に出してしまうと
会いたくて会いたくて
張り裂けそうなほどに胸が痛い。
それでも
「……もしかしたら、まだいるかも…っ」
気付いたら、体が動いていた。
ーーーーーーー
「忘れもんはないか!?」
「あァ、もう大丈夫だ!」
「全くお前ら、もうこんな時間だぞ。どんだけ時間かかってんだ。」
「お頭が急に出航決めるから!!」
「そうだそうだ!買い出しておくもんが色々あんだよ!!あんたは何も気にしねェけどな!!」
シャンクス達を乗せたレッド・フォース号は
今まさに出航すべく
甲板でクルー達が忙しく走り回る。
と、船首に立つシャンクスのもとへ
一羽の鳩がやってきた。
「おう、すごいタイミングだな。」
腕に止まった鳩から受け取った手紙を見た瞬間
シャンクスの表情が固まる。
その様子を見て、ベックマンは隣から
手紙を盗み見た。
「……何かあったようだな。」
「行かねェと。」
シャンクスはかけていたマントを羽織り
立てかけていたグリフォンを腰にする。
「冷静になれ。このタイミングでお頭が行ったら、確実にバレるぞ。そうならないために、ここを出ることを決めたんだろう。」
「だがよ、あいつがおれを求めてる。」
「チャンを、だろ。お頭をじゃない。」
「んなこと言ったって……放っておけねェ!」
腕を掴んで制するベックマンの手から
シャンクスが逃れたときだった。
「あれは…」
「ミドリだ。酒場の!」
「お頭!ミドリだ!!」
港の方を見ていたクルーが
遠くからミドリが走ってくるのを見つけた。
「……こいつを、おれの部屋に頼む。」
シャンクスは鳩をベックマンに託し
甲板を降りた。