第五章 〜さよならの前に〜
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今にも泣き出しそうな顔のミドリを
家まで送ろうとしたが
ひとりになりたい、と彼女がそれを拒否し
結局そのまま別れた。
やっちまった。
完全にアウトだ。
あんなこと言っちまって、ミドリを傷付けた。
ミドリの気持ちには、なんとなく気付いてたが
——この人はダメです!
あの時のミドリの行動に確信した。
胸が熱くなった。
顔が緩むのを抑えられなかった。
が、冷静になれば
それはあいつのためにならねェこともわかる。
こんな自由を追い求めてる相手に恋をしたって
何もいいことなんかない。
「なんだ、戻ったのか。」
船に戻り
出迎えてくれたクルーへの挨拶もそこそこに
ベックの元へ向かう。
航海日誌と海図を開いて
何やら書き物をしているようだった。
「ちゃんとミドリに正体を明かしたんだろうな。」
「明日、ここを出る。」
おれのその一言に
視線を机の上からおれの顔へと移す。
「おれのわがままに付き合わせて悪かったな。皆に伝えておいてくれ。」
「ミドリのことは…もういいんだな。」
「あァ、いい。もういいんだ。」
それ以上何も聞かないベックの元を離れ
自室に戻る。
机の上にはミドリから送られてきた
この島のエターナルポースと
その隣に17年前の、あのウサギのぬいぐるみ。
机の横には
まだ戻ってこない鳩の鳥籠が置いてある。
全て、チャンにとって大切なものだ。
おれが欲を出さず
きちんとチャンとして接していれば
ミドリを傷付けることはなかった。
こんなことになるなら
来るべきじゃなかったのかもしれない。
こんな形で、ミドリを傷付けることになるなら。
じゃあな、ミドリ。
さよならだ。
だがチャンはこれからも変わらず
お前を見守っている。