第五章 〜さよならの前に〜
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「シャンクス!痛いってば!もう離して!」
「あ?あァ、おう。悪かったな。」
誰もいない裏路地に入ったところでそう言うと
シャンクスは立ち止まり素直に手を離してくれた。
突然この人が現れたことに
そしてこんなところまで連れてこられたことに
私は完全にパニックだ。
「意味わかんない…どうしてこんなっ…」
「あ?お前だって昨日おれに似たようなことしたろ。」
「あ、あれは……」
パニックで忘れていた昨日の失態を思い出し
恥ずかしさから顔を逸らす。
「たまたまだったんだ。たまたま歩いてたら、お前ら2人を見かけて。」
何やら罰が悪そうに
シャンクスは自分の頭をクシャクシャと掻く。
「ミドリお前、昨日のアレはずりィよ。おれにあんなことしといて、今日は他の男と会ったりしてよ…」
……ちょっと待って…
「しかもそんな格好…易々と見せてんじゃねェ。」
これって……
「お前ら2人を見た途端、頭に血が昇ったんだ。楽しそうに歩きやがって。」
まさかシャンクスが
「お前が他の野郎とよろしくやってんのも、他の野郎がお前を色眼鏡で見るのも気に入らねェ。」
私を意識してる?
「………」
「……あ、いや、やっぱりなんでもねェ。今のは忘れろ。」
「な!なにそれ!そんなこと言うなんて、シャンクスの方がずるい!!忘れられるわけない!!」
思わず声を荒げる。
顔は沸騰したように熱い。
「こっちはあなたを忘れようと必死だったのに!!どうにかっ…他の人を好きになろうと思ってたのにっ……」
あぁ、もう、やってしまった。
こんなの、ほとんど告白だ。
勇気を出して見上げると
シャンクスは赤くなった顔でポカンとしていて
それを隠すように、額に手を当て
下を向いてしゃがみ込んだ。
「だからなァ…そういうお前の方がずるいんだって……」
顔は下を向いたまま
伸びてきた大きな手が、私の左手を掴む。
シャンクスの掌の熱が伝わってきた。
やっぱり私、この人が好きだ。
他の人じゃ、ダメなんだ。
好き。
ちゃんと言いたい。
目の前にしゃがんで
シャンクスと視線を合わせる。
「シャンクス、もう私の気持ち気付いてるんでしょ?」
言いたい。ちゃんと。
「私、シャンクスのこと——」
「送る。悪かったな、引き止めて。」
言葉を遮るようにシャンクスは私の手を離し
何事もなかったように立ち上がった。
「待って。」
「悪かったな。おれも今日はどうかしてた。」
「どうして聞いてくれないの!私っ——」
「ミドリ。」
もう一度、私の言葉を遮って
顔を覗き込んできたシャンクスが
いつになく、真剣な顔をしていた。
そして発せられた言葉に
「おれたちは明日、この島を出る。」
私は絶望する。