第二章 〜現れた大海賊〜
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いい女になったじゃねェか。
小さくなっていくミドリの後ろ姿に
心の中でそう呟いた。
どうしても緩んでしまう頬を隠すよう
ブランケットに顔を押し付け、目を閉じる。
最高の一日だった。
17年ぶりにこの島に上陸して3日目。
事情を知らない幹部以外のクルー達は
なぜ今さら偉大なる航路の前半まで来るのかと
不思議がっていたが
今ではそれぞれが島を楽しんでいた。
どこかの酒場にミドリがいる。
それしか情報がない中で
幹部達とクルーを数人連れ、酒場を何軒か回った。
そして今日、見つけた。
「いらっしゃいませ〜!」
扉を開けて一番に顔を見せた彼女がそうだと
すぐにわかった。
17年も会っていないのに、確信が持てたのは
その首元に、おれが送ったペンダントが
光っていたから。
柄にもなく女に贈り物なんて
照れ臭かったが、贈っておいてよかったと思った。
同時に緩む頬を必死に抑え
ポーカーフェイスを保つ。
おれが”チャン”だとバレるわけにはいかない。
「お酒、お待たせしましたー!」
「ありがとうございました!またお待ちしてますね!」
キビキビと動き回るミドリを
バレないようにテーブルから盗み見る。
泣きべそをかいていたチビが
こんなにも変わるのか、と驚いた。
はたから見れば、間違いなく誰もが
”いい女”だと言うだろう。
客の中にも、明らかにそういう目で
彼女を見てるヤツもいた。
おれ達を警戒しているのか
笑顔は向けてくれるものの
どこか辿々しく落ち着きがなくて
用事を終えればそそくさと席から離れる。
そんなところも、なんだか愛くるしく見える。
酒がよく進んだ。
「見つけたのか。」
隣のベックが機嫌のいいおれの
視線の先に気付いた。
「あァ。間違いない。」
「よくわかったな。17年経ってれば面影も何もないだろう。」
「いや、わかるよ。」
ベックにはペンダントのことは言っていない。
冷やかされるのが目に見えてるから
言うはずもなかった。
でもきっと、あのペンダントがなくても
おれには彼女がミドリだとわかったと思う。
確かに容姿はまるっきり変わったが
「あの笑顔。ガキの頃のままだ。」
相手を安心させるような、癒すような
懐っこいその表情は
何ら変わりなくそこに在った。